2014/5/15

音楽レビュー

ケニー・ギャレットはスピーチで得意の日本語を披露。東日本大震災の被災地にエールを送ると、モード系の熱い曲「2ダウン&1アクロス」では日野皓正との2管編成で切れ味鋭い即興を繰り出した。

会場の大型モニターに映し出されたケニー・ギャレット。日本語で東日本大震災への応援メッセージを訴えた
日野皓正、ケニー・ギャレットらが熱い演奏を繰り広げた

ジャズはだれもが土俵に出入りしながら、会話するような気安さで即興を重ねつつ作る音楽。和声の進行など、限られた制約さえ満たせば、呼吸次第で相手との間合いを詰めつつどんどん熱を帯びていく、祝祭向きの音楽でもある。

そんなジャズの特徴にユネスコが着目した。平和と結束、対話推進といった理念をジャズを通じて広めようと、4月30日をインターナショナル・ジャズデイと定め、世界各地で祝祭行事を開いている。ジャズデイは2012年年にスタートした。初回はユネスコ本部のあるパリ、国連本部のあるニューヨーク、ジャズ発祥の地ニューオーリンズの3カ所を中心に、関連行事を世界150カ所で開いた。13年のトルコ・イスタンブールに続き、今年のホストシティーに立候補地の中から大阪が決まり、一期一会のコンサートが実現した。

日本勢のほか、アフリカ・マリ共和国の歌手、英国のサックス奏者、ブラジルのトランペット奏者ら、国際色も豊かなら、女性陣起用もボーカルに偏ることなく、要所要所への目配りが聞いている。ことにエスペランサ・スポルディングとテリ・リン・キャリントンの名花2人のリズム隊は、安心感があって力量十分。男性陣にもまれて肩身の狭い思いをしながら……なんてとんでもない! むしろジャズの新たな地平線を男性陣より先取りしそうな潜在力を感じた。ユネスコがジャズに期待する「壁を持たず、対話、調和と相互理解を進める力」の趣旨にのっとった人選といっていい。

大団円の後、聴衆の声援に応える出演者ら

フィナーレはジョン・レノンの「イマジン」。素直な和声進行の構成でくずしがいがある。大物たちがこぞってステージに入り乱れ、熱気を帯びながら大団円になだれ込んだ。

ユネスコの事業とあって、営利を目的とした興行と違い、出演者は原則ノーギャラ。交通費程度の支度金だけしか払われないという。しかもコンサートは大阪の一夜だけ。同じ一行で東京に巡回、ともならない。意気に感じた出演者らが、手弁当で集まったようなもので、何もかも異例尽くし。まさに夢の一夜だった。

(編集委員 岡松卓也)

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