北米のオーケストラを聴こう 名門楽団の来日相次ぐボストン、フィラデルフィア、モントリオール3都物語

今年は2月のニューヨーク・フィルハーモニックを皮切りに5月のボストン交響楽団、6月のフィラデルフィア管弦楽団、10月のモントリオール交響楽団と、北米の名門楽団の日本公演が相次ぐ。

ボストン響は「まさかのデュトワ」と実現

ヨーロッパに比べれば「新大陸」だが、それぞれの都市とともに独自の文化を担い、国際的にも第一級のアンサンブルをはぐくんできた。特に管楽器には名人級の奏者が多く、日本のブラスバンド少年少女たちも熱い視線を送る。指揮者も若手から巨匠まで多士済々。よりすぐりのレパートリーを立て続けに聴ける、ぜいたくな競演だ。

1881年創立のボストン響は長くニューヨーク・フィル、フィラデルフィア管、シカゴ交響楽団、クリーブランド管弦楽団とともに米国の「五大楽団(ビッグファイブ)」の一角を占めてきた。1960年に当時の音楽監督、シャルル・ミュンシュの指揮で来日して以来、日本でも高い評価を受けてきた。中でも小澤征爾が音楽監督だった1973年から2002年までの間に6回の日本ツアーを行い、空前の人気を誇った。だが小澤の後任、ジェイムズ・レバインはニューヨークのメトロポリタン歌劇場の音楽監督と兼務の上、健康面の理由もあって04~11年の在任期間中、ボストン響と来日する機会を逸した。

ミュンシュは仏独の間を揺れ動いたアルザス出身のドイツ人でフランスに帰化、ライプチヒ・ゲバントハウス管弦楽団の楽員から指揮者に転じた。その背景が示すようにボストン響にドイツ、フランスに限らない幅広い音楽への適応性を植えつけた。ミュンシュの後はウィーン生まれのエーリヒ・ラインスドルフ、ケルン生まれのウィリアム・スタインバーグとドイツ語を母国語とする亡命ユダヤ人指揮者が君臨、小澤の代でよりインターナショナルなサウンドを獲得した。

シャルル・デュトワ

今年5月9日と10日、中国公演(北京、上海、広州)の帰途に実現する東京・サントリーホールでのコンサートは、実に15年ぶりの日本公演となる。新しい音楽監督でラトビア出身の若手、アンドリス・ネルソンズの就任は今年9月のため、今回のアジアツアーの指揮は米国の長老、ロリン・マゼールに委ねられた。ところがマゼールが脚をけが、5月末までの演奏活動にドクターストップがかかってしまい、シャルル・デュトワに代わった。

フランス系スイス人のデュトワは、日本ではNHK交響楽団名誉音楽監督として著名。北米では1977~2002年のモントリオール響音楽監督の時代に大量のレコーディングを行ったほか、08~12年にはフィラデルフィア管首席指揮者も務め、最も信頼されるマエストロ(巨匠)の一人だ。たまたま休暇中で急な代役を引き受けたが、ボストン響とも30年以上の共演歴がある。昨シーズンからは20世紀初頭の音楽を継続して紹介するプロジェクトを委ねられ、今シーズンはシマノフスキのオペラ「ロジェ王」のボストン初演も指揮する。

曲目はマゼールが決めた通りでいく。ベルリオーズの「幻想交響曲」(9日)、モーツァルトの交響曲第38番「プラハ」とマーラーの同第5番(10日)。さらに9日はオランダの実力派、ジャニーヌ・ヤンセンが独奏するチャイコフスキーのバイオリン協奏も加わり、名曲総ざらいの感がある。