「財政破綻」は実際にどういうことなのか夕張市長 鈴木直道(1)

夕張市内には映画祭にちなんだ通りも

税金をあげれば当然消費は冷え込みます。2010年に発覚したギリシャ危機のときも議論になったように、確かに緊縮財政は必要です。一方でそれだけでは解決しない。

「財政再生団体」になった夕張は負担を増やされ、サービスも削減されたうえに、市民は18年間、ただ借金を返すために暮らしていくことになりました。もちろんこれは北海道や国とも協議し、夕張が同意して決めて、実行していることです。

しかし、私はそのことに大変な恐怖を覚えました。全市民が借金を返すためだけに働き続けるということのむなしさを、だれも何も考えていないんじゃないか、と正直思ったんです。

課題先進国の課題先進地

読者の皆さんはひとごとのように思うかもしれません。しかし、今でこそ1兆円の基金を持つ東京都も、私が就職した1999年度に前年度決算で1068億円の赤字を出していました。地方財政健全化法は約1700あるすべての自治体に適用されます。自分の住んでいる自治体が破綻すれば、皆さんにもさまざまな不便が降りかかります。ところが実感としてとらえることは難しく、破綻したとき、夕張に住んでいる多くの市民も、ニュースで知ったような状況だったんです。

去年、私はダボス会議の開催で知られる世界経済フォーラムが選ぶ『ヤング・グローバル・リーダーズ』に選んでいただきました。

「日本は世界でも類をみない課題先進国だ。高齢化の問題、東日本大震災以後の原発の廃炉問題。そういうことを考えると日本は世界が注目すべき課題がたくさんある。その課題先進国のなかの課題先進地が夕張だ。そこが今後どうなっていくのか、非常に注目している」

私が選ばれた理由を尋ねたとき、スイスの事務局の人はそう答えました。受賞といっても決してもろ手をあげて喜ぶことではなかったかもしれませんが、私が日々考えていることを案外、世界の人たちも考えていると分かりました。

世界の長寿国である、つまり高齢化率も高い日本のなかで、夕張はもっとも高齢化率が高い地域のひとつです。日本には国と地方をあわせて1000兆円を超える借金があり、なかでも夕張は唯一の再生団体でかつ、財政規模に比してこれだけの赤字を作り破綻した例をみない自治体です。つまり、夕張が抱えている課題は日本の抱えている課題にそっくり重なるんです。

今後連載のなかで、私が夕張で取り組んできたことを紹介していきます。

たとえば、炭鉱住宅をそのまま受け継いだ老朽化した公営住宅や、市街地から遠く離れた地域に住む人々を、将来的に国道、道道沿線の便利な場所に集団移転してもらう「住宅再編事業」があります。

行政サービスの効率化だけでなく、お年寄りの孤立を避け、ケアが行き届くようにするための大切な事業ですが、何十年も住み慣れた場所を離れてほしいと説得することはとてもつらいことでした。

それでもみんなが夕張に住み続け、次の世代に夕張をつなぐために必要なのです、という思いは住民のみなさんと膝をつきあわせて何度も話すなかで伝わり、今はほぼ100%の同意をいただくことができました。

皆さんも高齢化率、人口減少、財政難という共通した課題を考えるのなら、これを一地方自治体の問題として考えるのではなくて、逆にこのケースを乗り越えたらいろんなことに対応できるモデルとなるだろう、と考えてみてはいかがでしょうか。少なくとも前向きに話し合っていくほうが有意義だ。私はそう考えています。

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