おせち彩る「かまぼこ」 職人技、国家資格で板につく

おせちの膳を彩り、めでたさを盛り上げるかまぼこはなぞの多い食品でもある。なぜあんなかっこうで、板についているのか。工場を訪ねてみるとかまぼこ作りの1級技能士、という国家資格を持った職人が、ぴちぴちの魚を惜しげもなく練って蒸す驚きの世界があった。

手作りかまぼこの製造現場(小田原鈴廣)

かまぼこづくりは素材が命

神奈川県小田原市。昔から相模湾などでとれたイサキやカマスなどの魚を使い盛んにかまぼこが作られてきた。

なかでも2015年に創業150年を迎える老舗として知られるのが「小田原鈴廣」。その製造工場で使うのは体長20センチ~40センチの白身魚グチ(イシモチ)が多く、現在では主に長崎で水揚げされる魚を使っている。

そのまま焼いたり煮たりしてもうまそうな魚を、手のこんだ工程が待っている。三枚におろし白身だけにしたグチの身を水にさらしたあと、塩を入れてすり、練り上げる。すり身ができたら、職人が板につけていく。

板に乗せるのは簡単そうにみえるし、素人でもできなくはない。しかし、実はここにコツがある。すり身を乗せたへらのような包丁が何度も板の上を行き来し、少しずつあの見覚えのある形ができあがってくる。すり身を塗り重ねていくわけだが、この工程で空気を抜きながら作らないと、蒸したときに食感が悪くなる。何気なく動かしているようにみえる包丁さばきだが、熟練の技が求められる。

板につけたら50分ほど蒸して、かまぼこの完成だ。

「かまぼこ作りの命はまず素材です」と話してくれたのは小田原鈴廣の神兼智製造部長。主に九州でかまぼこに使われるエソという魚があるが、水揚げしてから2日が品質管理の限度だという。関東では使えないため、品質の管理がしやすいグチが主に使われている。

小田原鈴廣の「一(はじめ)」

小田原鈴廣には季節ごとの旬の魚を使った「時季(とき)づくり」というかまぼこもある。春はタイ、夏はイサキ、秋はカマス、冬はムツを使う。特にムツは「やさしくてもっちりしている」といい、かまぼこには最高の素材だという。このムツやオキギス、シログチを使った小田原鈴廣の最高級品、限定300セットの「一(はじめ)」は紅白2本で18000円。これを作る日は素材への敬意を込め行水して体を清めてから、工場に入るという入れ込みようだ。「かまぼこは魚の最高の調理法」と信じて疑わない。

実は神さんはかまぼこ作りの「1級技能士」の資格を持っている。

かまぼこ作りの腕前認める資格

これは厚生労働省がかまぼこ作りの腕前を認証するれっきとした国家資格で、試験の正式名称は「水産練り製品製造技能検定試験」、資格名を「水産練り製品製造技能士」といい、1級と2級がある。

試験には「生魚コース」と「冷凍すり身コース」の2コースがある。会社や工場によって使う素材が異なるので、それに合わせて選ぶ。どちらにも実技(作業と要素)試験と学科試験がある。学科試験では、板付きかまぼこが製造されている地域を尋ねる問題や、漁獲した後、どのタイミングで魚を凍結するのがよいのかを問うものなど幅広く出題されるという。

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