仕事や立場が異なる人たちが、同じ空間で交流しながら働く「コワーキングスペース」が増えている。起業やビジネス上の連携だけでなく、利用者同士が刺激しあえると支持され、地域や人との関わりに生かそうとするケースも出てきた。仕事と暮らしが自然な形で近づく現場を訪ねた。
大阪の中心部・梅田から電車で3分、十三駅に近いビルに、深沢幸治郎さん(34)、周代さん(28)が運営する「JUSO Coworking」(大阪市)はある。仕事用の大きな机、ソファ、靴を脱げるスペースがあり、オフィスというより柔らかな印象の部屋。深沢さん夫妻のほか数人が仕事を進める。
「共働きなので、夫婦と子どもが一緒にいられる時間を増やすための働き方を考えた」。2008年に結婚し、翌年に長男が生まれた直後、ウェブデザイナーの夫は朝8時に自宅を出て、帰宅はいつも深夜だった。「朝の30分しか家族で過ごせない生活はおかしい」と、周代さんが説得する形で夫は独立した。
月に100人が利用
様々な人が同じ場所で働くコワーキング(協働)という言葉に関心を持ち、周代さんが管理事務の仕事をするビルにスペースを開いたのは10年末。自宅と保育園から徒歩5分のビルで、夫婦が仕事をする生活が始まった。「仕事場で子どもが遊んでいてもいいじゃない」と始めた「家族ラボ」という体験イベントやITの勉強会を通して、自営業者から会社員まで幅広い人が集まり始めた。現在では月のべ100人が利用する。
▼コワーキングスペース フリーランスで働く人や起業家らが各自の仕事やノートパソコンを持ち寄り、情報やアイデアをやりとりしながら働く場所。壁や仕切りを極力排し、休憩スペースやWi―Fi(無線LAN)や電源を用意する。東京・渋谷が一大集積地だったが、ここ数年で地方都市でも増え、全国で約300カ所になったとされる。
ドロップインと呼ばれる数時間~1日の利用、月単位の契約、集中するための簡易ブースを併用できるプランなど様々な形態がある。イベントや勉強会も多く開催されており、会社帰りの人や学生にまで利用者が広がっている。
ドロップインと呼ばれる数時間~1日の利用、月単位の契約、集中するための簡易ブースを併用できるプランなど様々な形態がある。イベントや勉強会も多く開催されており、会社帰りの人や学生にまで利用者が広がっている。