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「臆病な零戦操縦士」に込めた思い 百田尚樹さんに聞く 映画「永遠の0」原作者

2013/12/20

――若い読者の感想をインターネットで見ることがある。多い感想は「知らなかった」というものだという。

戦争について知っていることもあると思うんです。1941年に日本が真珠湾を攻撃し、1945年に無条件降伏した。東京、大阪、名古屋に大空襲があった。広島、長崎に原爆が落とされた。そういった「箇条書き」の事実は彼らも知っているでしょう。

若い読者たちが知らないのは、日本がどう戦い、どう敗れてきたのか。そして自分たちのおじいちゃんやおばあちゃんが、どういう時代を、どう生き抜いてきたのか。小説がきっかけで「もっと知りたい、勉強したいと思った」いう声を聞くと、うれしくなります。「亡くなったおじいちゃん、おばあちゃんにもっと話を聞いておけば良かった」という感想を読むと切なくなります。

若い世代にとって太平洋戦争はずいぶん昔の話に思えるでしょうが、江戸時代とは違って、探せば自分の親族にも戦死者がいる、そういう時代の話なんです。

――「永遠の0」はこれまで映画化の依頼が何度もあったが、すべて断ってきた。

これまであった映画化の話は全部、脚本が気に入らなかったんです。原作は600ページくらいあるので、普通にまとめたら7~8時間の作品になってしまいます。これをまとめるのは難しい。「これは自分が脚本を書くしかないな」と思って、書き始めたこともあるのですが、結局、できませんでした。自分でもできないんだから、これは映画化は無理だなと思っていたのです。

そんなとき、山崎監督から「映画にしたい」という話があって、シナリオを見せてもらったら、これがすごかった。他の脚本はモタモタしているところがあって、焦点がぼけるなと感じたところもあったのですが、それがまったくなかった。話の流れも、展開もお見事。映画にするために原作と違うところもあるのですが、全然気になりませんでした。

できあがった映像を見たら、これもお見事としか言いようがない。試写を4回見ました。普通4回も見ると、どれだけよくできた映画でも退屈するシーンが出てくるものなんです。今回の映画にはそれがまったくない。僕は10年に一度の傑作だと思っているんですが、ややこしいことに僕は原作者なので、「そりゃ、お前、原作者だからやろ」と言われてしまう。だから原作者やなかったらよかったのに、と思うくらいですわ(笑)。

『永遠の0』 百田尚樹の同名ベストセラー小説を『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズを手がけてきた山崎貴監督が映画化。司法試験に落ち、進路に迷う佐伯健太郎は、祖母の葬儀で初めて祖父・賢一郎と血のつながりがないことを知らされる。健太郎はフリーライターの姉の取材を手伝い、特攻で戦死した実祖父宮部久蔵の生涯を調べるため、祖父の元戦友たちを訪ねていく。彼らによると祖父、宮部久蔵は天才的な零戦操縦士だったのに、なぜか「海軍一の臆病者」といわれていた。宮部が残した「謎」を解いていくと、驚くべき“真実”が……。2013年12月21日(土) 全国東宝系でロードショー。

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