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「臆病な零戦操縦士」に込めた思い 百田尚樹さんに聞く 映画「永遠の0」原作者

2013/12/20

――「探偵!ナイトスクープ」(朝日放送)など、長年、テレビの世界で放送作家として活躍してきた。

テレビの世界で長い間、仕事をしてきましたが、小説を書くに当たって、マーケティング的なことやビジネス的なことは一切考えませんでした。計算とかは一切なく、ひたすら書き続けて、完成させたのです。

ただテレビの手法を生かしたところはあります。とにかく読んでくれた人がページを繰るのをやめさせない本にしようと考えたことです。

テレビは最初から面白くないと視聴率が取れないんです。そして、途中に面白くないシーンを入れてもまた視聴率はとれない。とにかく全部面白いシーンをいれてあげないといけないんです。

「永遠の0」を書くときも、それは意識しました。いきなり面白い。読者を最初の1ページからつかまえる。つかまえたら絶対離さない。余計なシーンは一切出さない。それは今も一緒です。

――現在、売り上げが合計で390万部といわれる「永遠の0」だが、出版した当初はまったく売れなかったという。

書き上げてみたら、400字詰め原稿用紙で1000枚近い長さになっていました。出版社の新人賞に応募しようと思っても、規定の枚数を大きく超えています。そこで、いくつかの出版社へ持ち込んでみたんです。

そのとき、口をそろえて言われたのが「これは売れません」。

今の出版界では戦争物は売れないそうです。その中でもノンフィクションはまだ売れるけれど、フィクションはほとんど売れないと言われました。しかも書いたのは無名の新人だし、50歳だし、作品は長いし、賞も取っていないし。出版社にことごとく断られて、ようやく縁あって太田出版から出してもらえました。

でもやっぱり売れなかった。新聞や雑誌、テレビやラジオ、どこの書評欄にも載せてもらえませんでした。

――出版当初は売れなかったが、徐々に部数を伸ばし始める。それとともに読者層にも変化が生じた。

当初はまったく売れなかった「永遠の0」ですが、クチコミで徐々に広がっていったんです。爆発的には売れなかったけれど、じわじわと売れていった。出版社に聞くと、こういう売れ方で100万部を超えた本は珍しいそうです。

広まっていくうちに読者層も変わっていきました。最初は読者の90%が男性、ほとんどが60代以上で、50歳以下は買わなかった。それが徐々に年齢層が下がっていったんです。女性読者も増えてきました。今年に入ってからの読者は10代、20代が多くて、女性の比率も高いそうです。

――文庫を担当した講談社文庫出版部の大久保杏子さんが、クチコミでの人気を実感したのは初めて重版がかかったとき。だがそのときでも「100万部を超える作品になるという確信はなかった」。現在の売上390万部という数字は文庫市場全体で今世紀に入って初めての数字だという。

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