店の知識不足も

だがこうした動きは広がらない。消費者庁は11~12年に今後の食品表示のあり方を問う検討会を開いた。外食のアレルギー表示は議題に上がったものの、義務化は見送られ、今後の専門検討会の設置を最終報告に盛り込むにとどめた。「メニューや仕入れ先が変わることも多く、その都度確認するのは大変。キッチンでの調理段階や加工場の製造ラインなどで意図せずアレルゲンが混入する可能性もあり、飲食店での対応は難しい」(消費者庁食品表示企画課)と判断した。

「お客様は何かアレルギーをお持ちですか?」。親子カフェ「il sole」(東京・杉並)は注文を受けるとき、来店者全員に必ず確認する。オーナーシェフの辻正博さん(35)は東京・銀座の一流ホテルで修業を積んだ。長男が食物アレルギーを持っており、09年に独立するときにアレルギー対応に挑んだ。アレルゲンの混入リスクがある仕入れ先は排除。アレルギーに応じて材料や調理法を個別に工夫し、本格イタリア料理を提供する。

口コミで評判が広がり、首都圏はもちろん北海道や愛知、大阪からも予約が入る。特に人気なのはアレルゲンを除去した手作りケーキ。要望があれば卵や乳も使わない。アレルギーを持つ子どもの誕生日会などで注文がよく入る。辻さんは「手間暇かかるが、もうけを最優先にしなければできないことではない」と強調する。

藤田保健衛生大学の宇理須厚雄教授(小児科)はNPO法人アレルギー支援ネットワークの協力を得て、12年に「食物アレルギーひやりはっと事例集」をまとめた。外食で発症したケースを分析すると、うどんとそばを同じ釜でゆでていたり、卵を切った包丁を洗わずそのまま使ったりするなど店側の知識不足も浮き彫りになった。「正確な知識を店が持っていれば対処できる問題もある。食品を扱う以上、ある程度の知識をしっかり学んでほしい」と指摘する。

「外食店で発症」58%

外食先での発症は決して珍しくない。NPO法人アレルギーっこパパの会(東京)が保護者を対象に今夏調査したところ、58%が「(外食先で発症の)経験あり」と答えた。このうち2割は命にかかわるアナフィラキシー症状を起こしていた。

もし飲食店で発症したとしても、半数は店にそれを伝えないと回答した。伝えない理由(複数回答)は「初めからリスクを覚悟して外食している」が最も多く、約6割を占めた。代表の今村慎太朗さん(33)は「伝えても対応が期待できるわけでもなく、保護者のやるせなさがうかがえる」と説明する。

今村さんの長男も食物アレルギーがある。誰もが安全に外食できる環境をつくりたくて、今年NPO法人を立ち上げた。「完ぺきなアレルギー対応をすべての店に求めはしない。まずはコミュニケーションを図れる体制にしてほしい。何ができて何ができないかを正確に情報開示してもらえるだけでも助かる」

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