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狙った個性にろくなものはない 「永遠の0」山崎貴監督の現場拝見2

2013/12/14

百田尚樹氏のベストセラー小説「永遠の0」を監督した山崎貴さんに映画制作のツボを聞くインタビューの第2回は作品の「個性」について。意図して出そうとした個性にろくなものはない、と話す。(聞き手は日経BP社 デジタル編集センター編集委員 大谷真幸)
山崎貴(やまざき・たかし) 1964年長野県生まれ。2000年『ジュブナイル』でデビュー。CGによる高度なビジュアルを駆使した映像表現・VFXの第一人者。『ALWAYS三丁目の夕日』(2005)で日本アカデミー賞最優秀監督賞、脚本賞受賞。『SPACE BATTLESHIPヤマト』、日本初の長編3DCGアニメーション『friends もののけ島のナキ』(2011)など。

山崎貴さんは1964年生まれ。映画の道を志したのは、中学生の時に映画「未知との遭遇」(1977年。日本公開は1978年)を見てからだという。1986年に映画のVFX(視覚効果)などを手がける会社「白組」に入社。2000年には映画「ジュブナイル」で監督デビューする。これまで手がけてきた映画は「リターナー」(2002年)「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(2010年)とSF色が強いものから、アニメ「クレヨンしんちゃん」を原作としながら江戸時代を舞台にしたラブストーリーを描いた「BALLAD 名もなき恋のうた」(2009年)、そして昭和30年代の東京を描いた「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ(2005年~)と時代もジャンルもさまざまだ。

――どういう基準で関わる作品を選んでいるのですか。

仕事を選ぶときに意識しているのは2つのサークル(円)です。1つのサークルは自分がやりたい仕事。もう1つのサークルはお客さんが求める、下世話な言い方をすればヒットしそうな仕事。この2つのサークルが重なる部分に入る作品に関わりたいと、いつも思っています。

「自分がやりたいからやる」だけではなく、「ヒットを目指す」だけでもない。どちらか片方だと、うまくいかなかったときに切ない気持ちになると思うんです。ヒットを狙って自分がまったくやりたくないものをやって失敗したらすごく切ないし、自分の好きなことだけを追及して当たらなかったら「ほら、見たことか」って言われるでしょうし。

映画は人のお金を預かって作るものですから、ヒットはしたい。でも、自分の作りたいものは作りたい。だから2つのサークルの重なる部分に入る企画は、何でも撮る。結果はわかりませんけれど。

――実際、これまで手かげてきた映画は幅広いですね。

僕の興味の範囲は広いんです。それはこの仕事をする上で良かったと思います。最初はあまり乗り気じゃない企画でも、調べていくうちにどんどん好きになっていく。お見合い結婚じゃないけれど、紹介されて、その人に会って、一目ぼれというわけじゃないんだけど僕のところに来てくれるという。「だから、ちゃんと好きになろう」と思うと、いろいろな発見があるんですよね。「この子にはこんなかわいいところがあったんだ」って。すると、どんどん好きになっていくんですよ。

「3丁目の夕日」は、その最たる例ですね。プロデューサーの「子供のころの楽しかった時代をCGで見たい」というところから始まったんですから。西岸良平さんのマンガは尊敬していたんですが、それでも関わり始めてしばらくは「この人とやっていけるのかな」と思っていました。でも付き合ってみると意外といい人だった(笑)。3作も作ったんですからね。今まででいちばん長く付き合った人になりました。

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