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映画作りは「とんち力」 「永遠の0」山崎貴監督の現場拝見1

2013/12/7

百田尚樹氏のベストセラーを映画化した「永遠の0」(12月21日公開)を監督した山崎貴さんは撮影現場では「とんち力」がものをいう、と語る。「ALWAYS 三丁目の夕日」「SPACE BATTLESHIPヤマト」などのヒット作を手掛けてきた監督も、分厚い原作を1本のシナリオにまとめるのには七転八倒したとか。異色の戦争ドラマをかつてない戦争映画に練り上げた山崎さんに、3回にわたり、作品作りのツボを尋ねた。
(聞き手は日経BP社 デジタル編集センター編集委員 大谷真幸)
山崎貴(やまざき・たかし) 1964年長野県生まれ。2000年『ジュブナイル』でデビュー。CGによる高度なビジュアルを駆使した映像表現・VFXの第一人者。『ALWAYS三丁目の夕日』(2005)で日本アカデミー賞最優秀監督賞、脚本賞受賞。『SPACE BATTLESHIPヤマト』、日本初の長編3DCGアニメーション『friends もののけ島のナキ』(2011)など。

――そもそも「永遠の0」を映画化しようと思ったきっかけは?

昔から戦争を題材にした作品を作ってみたいとは思っていたんです。そこに、プロデューサーから「いい原作がある」といわれたのが「永遠の0」でした。

さっそく読んでみたら、すごく面白かった。夕方から読み始めたんですが、翌日、大切な打ち合わせがあったのに、「わ~、どうしよう、止まらねえ」って(笑)。結局、読み終わったのは朝の5時でしたね。

小説を読み進めていくうちに、一般的な感動とは違う、カオスが押し寄せてくるような、ふしぎな感動があったんです。要素の集合体として真相がわかってくる、その構造的な面白さに引かれたんです。その感じを映画にしたいって。

――ただ、かなり長い小説ですよね。原作者の百田さんも「自分で脚本を書こうと思ったけれどうまくいかなかった」そうです。

そこは本当にまいったと思いました。分厚い小説ですからね(笑)。

そこで、最初にプロットを書いてみました。構成が勝負の作品だと思ったんです。原作にすごくいいせりふやいい場面があるので、それをどう取捨選択するかで、映画のぜひが決まると考えました。かなり苦戦しましたね。

――現代の若者である佐伯健太郎(三浦春馬)が、「海軍一の臆病者」といわれた祖父・宮部久蔵(岡田准一)のことを調べるため、当時を知る人たちを訪ねていく、という構成は小説も映画も同じ。構成で気をつけたことは?

一人一人のキャラクター設定にバリエーションをつける、ということですね。

厄介なことに出てくる人たちはみんな、宮部さんが大好きなんですよ。だから一歩間違うと「宮部さんはすごかった」の繰り返しになってしまう。全員が同じようないい人にならないように、それぞれのキャラクターのベクトルには配慮しました。それは原作も同じですよね。

さらに宮部の戦友たちが語るということは、うっかりすると、おじいさんがずっと話している映画になっちゃうんです(笑)。橋爪功さんが演じた井崎なんて、入院中だから、ベッドで寝ているだけ。

――変化をつけるのが難しそうですね。

血の繋がっていない祖父・賢一郎(夏八木勲)に話を聞く姉・慶子(吹石一恵)と弟・健太郎(三浦春馬)(C)2013「永遠の0」製作委員会

難しいです(笑)。でも橋爪さんは寝てるだけで持たせちゃうんですよ。他の方々もそうです。ベテランの方々は、演技力で見事に見せちゃうんですよ。

――映画では現代と戦争中の場面が交互に出てきますが、現代のパートは、橋爪さん以外にも平幹二朗さん、田中泯さん、山本学さん、夏八木勲さんとベテラン俳優揃いです。

剣道の師匠みたいな人のところに出かけて「お手合わせをお願いします」みたいな感じですから、緊張しました。毎回「お願いします」「まいりました」という繰り返しです。

でも僕より(佐伯健太郎役の)三浦春馬君が大変だったと思いますよ。剣豪たちと戦っているのは三浦君ですからね。僕は見ているだけですから。平さんとのシーンは「怖いんだろうな」と思いながら見ていました。心の中で「がんばれー」って(笑)。

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