「あなたにしかできない仕事」はないNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹(4)

管理職の仕事は「自分がいなくても回るチームを作ること」

かつてのオフィスの様子(2009年ごろ)

一番苦労したのは、管理職のマインドを変えることでした。

忙しい自分が好きで、忙しさ=自分の「かけがえのなさ」であると信じてしまう――。管理職に多い傾向です。責任感が強い人ほどそうなりがちですが、その人が機能しなくなったら止まっちゃうので、組織にとっては迷惑な話です。

彼らは「自分がいないと機能しなくなる」と存在価値を誇示し始めた。僕は「君たちがやらなければいけないことは、君たちがいなくなっても回るチームを作ること。『俺がいなきゃだめ』は禁句ね」と伝えました。

これでモチベーションやプライドを保てるのか。危惧する方もいるでしょう。でも、仕事に過度な「自分」はいらない。「自分の職場でのポジション=自分の存在価値」と考えるのは間違っている。

「あなたは個人としてはかけがえのない人だけど、職場としては代替可能な人間です。それは僕も同じです。誰かが誰かの代わりになる。そんな組織にならなければこの組織はよくならないし、僕が求めるのはそういう管理職です」と100万回くらい言いました。

「僕らはこの場所を世界一働きやすい職場にする。

それは必ず世の中を鼓舞することになる。それが僕らの使命だから業務としてやってほしい」と僕は何度も語りかけました。

そう言い続けるうち、彼らも「自分たちの働き方を変えることが、世の中の働き方を変えることになる」と思ってくれるようになりました。

組織がビジョンを提供できれば、自己実現は可能

こうした働き方は、これまでの「常識」からすると百八十度違うかもしれません。一般的には「誰にもできないことができる人になって、皆から頼られて自己実現」という考え方かもしれません。

でもそれは違うと思う。社員には、そんなところで自己実現しないでほしいと思います。なぜならそれは個人の最適化であって、全体の最適化ではありません。組織としては全体の最適化を目指すべきです。

では社員は仕事で自己実現はできないのか。そんなことはありません。それは組織がビジョンとして提供すべきなのです。

僕らの事業でいえば、すべての困っている人たち、子供たちにすばらしい病児保育や小規模保育を提供する。そしてすべての親たちが仕事と子育てを両立できるしなやかな社会にする、というビジョンに向けて自己実現してほしい。会社の大きな目的と個人のビジョンを重ね合わせ、そのビジョンを実現していくプロセスにおいて自己実現してほしいのです。

自分にしかできないことを、組織内にマッチポンプにつくり出すことが自己実現ではありません。それは手段と目的をはき違えています。あなたしかできないメールの書き方をしてほしいわけではない。自己実現と社会実現を重ね合わせてほしい、と思っています。

※隔週火曜日更新。駒崎弘樹さんのコラムは次回、11月12日(火)に掲載します。

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読者からのコメント
G@A 20代男性 東京都(会社員)
とても共感できる内容でした。自分は平社員で、 業界的にも長時間労働が当たりまえの会社です。頭では理解できるのですが、行動に移すことができないジレンマをいつも抱えています。この記事のおかげで改めてライフワークバランスを考えさせられました。
Anthen 30代男性 大阪府(会社員)
すごくいい話です。 会社員は会社の財産です。社員は楽に仕事ができるほど、会社がよくなります。 楽しく仕事ができると、会社員の不安、ストレスが解消できます。 楽しく仕事ができると、離職する社員がいないと思います。 楽しく仕事ができると、社員が長く勤めて、会社の重大な財産になります。 顧客が探せばまだいいけど、いい社員が離職するとなくなります。
柴犬 20代女性 愛知県(会社員)
「どう働くか」 昨今、難しい課題と思います。 長時間労働のうえに、一人あたりの業務は増える一方。 抜本的に会社として改善をすること、管理者の考え方を変えることももちろん必要です。 私は、まず相手(周囲)に求める前に、自分が変わる工夫をしました。 「仕事をきちんとこなし、定時に帰るにはどうしたらよいか?」それを自分で考え、実践(アクション)を起こすことが、一番必要ではないでしょうか。 目の前にある自分の仕事に、一生懸命取り組めば、 おのずと何をすべきか見えてきます。 ある程度は、周りに対して「割り切る」ことも必要です。 そうすれば、必要以上に悩んだり、腹を立てることも少なくなるのではないでしょうか。
20代男性 愛知県(学生)
NPO法人なのにベンチャー企業とはどういうこと なのでしょうか?
せらお 40代男性 兵庫県(会社員)
大きくうなずきながら読ませていただきました。NPOなので、いわゆる「オーナー企業」に比べ、より「代表者が倒れても、事業が継続することが当然」という状況下、スタッフにも「自分の代わりを準備し続ける仕事のやり方」を実践させる。素晴らしいことです。これまで約25年、職場はいくつか変わりましたが、ずっと「明日、私が交通事故で倒れても、誰かが代わりに仕事できる」ように意識して来ました。仕事とはそうであるべきだと固く信じています。
30代女性 東京都(会社員)
効率よい働き方、とてもとても共感しますが役員世代のおじさん達には響かなそうな気もします。時が経つのを待つしかないのかも・・いや、今からでも自分たちの世代が変えていかなくちゃですね。
50代男性 神奈川県(会社経営・役員)
会社に私がいなくても回ります。 しかし私が回すのよりもずっと遅くなる。 そうすると、同業他社との競争に負けて会社はなくなります。 社外との競争のない労働環境は羨ましいです。
金魚 20代女性 東京都(会社員)
日本人て、イメージ先行型の人が多いと思います。 ビシッとスーツ着て、朝から晩までひたすら仕事してる人が仕事ができる人ってイメージが先行してて、業務内容まで気にしてないと思います。 結局は内容のないことに時間をかけて「出来るふり」をしている人が多いのではないでしょうか。 時間をかけずに、いかに効率良く稼ぐか、という点は今まであまり重要視されなかった点かもしれません。 労働人口も減る一方で、業務は複雑化して行くわけで、 もっと1人1人の、時間的単価、業務的単価を上げる方法を考えなければ、と自問自答する日々です。
ippey 20代女性 兵庫県(会社員)
後に続く世代のためにも残業という2文字を職場から無くすべき。 働くことにネガティブなイメージを持ってほしくない。長時間の労働より短時間での生産性向上を。
渡良瀬 40代男性 東京都(その他団体職員)
自分が不要になることがミッション。何か問題が発生したら登板。 そういう管理職が増えると組織の活力が増しそうです。
butabana 30代男性 大阪府(会社員)
属人化とアイデンティティーを一緒にしている人が多い中、 しっかりと会社を育てていく社員をどう育成できるか。 各社、頭を抱えている問題と思います。 自身も管理職という立場で、部下をどう育てるか、悩みに悩んでおります。 この記事を読んで「会社と働き方」が少し明確になりました。 参考にさせていただきます。
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