2013/10/14
営業職女性の交流会「営業部女子課」を各地で開催、悩みを共有する

卒業は1998年春。大手金融機関が破綻するなど、ふつうの新卒でも就職が厳しかったころだ。病気の子供を抱え、夫もいない。見つけたのが、リクルートが出していた「営業職」の募集だった。契約社員として、フリーペーパーの出稿(広告)を獲得するのだ。営業という選択肢は考えていなかった。しかし背に腹は代えられない。書類も面接も通り、働き始める。「あなたのような立場の女性は、強いから」。そんな上司の言葉に救われた。子供がいるから結果が出ないと思われたくない。頑張ろうと決めた。

がつがつせず、相手の役に立つ

しかし試行錯誤は続く。営業先は飲食店や美容院など。周りには優秀な男性の営業マンが大勢いた。成果が上がらない中で「彼らのまねをして同じことをしていてもダメだ」と感じた。じみでもこつこつやろう、と。

売ろう、売ろうと「がつがつ」するのをやめた。売らない。その代わりに相手の「役に立とう」と決めた。「商売が大変で」とやんわり拒絶されれば「そうですね」と共感を示し、営業トークはしない。店主に代わり、都内で人気の高い店や流行の髪形などを手製のリポートにまとめて届け、人気メニューを一緒に考えた。そうするうち、「あの子」が「リクルートさん」になり、「太田さん」へと呼ばれ方が変わり、相談を持ちかけられるようになった。

効率は悪い。しかし「人間関係を『効率よく』築くことはできない」と信じる。大口だけを狙い受注すれば、一時は利益が出ても、続かない。小さな店との信頼を、一緒に、時間をかけて大きく育てていく。「これ、子育てと同じなんです」。週末や深夜は仕事をしない。その分、平日の昼に仕事をてきぱきこなす技を身につけた。

営業先は中小企業が多い。実績が上がるようになると「起業しなさい」というおばの言葉が蘇った。社内の優秀者表彰に3回入ったら起業しよう。20代のうちに。そう決め、実行し、29歳でリクルートを辞めた。

企業内研修や企業の枠を超えた交流会を通じ、営業職の女性を元気づける

女性営業職に特化したコンサルティングを開始。しかし今回も順風満帆にはいかない。「時期尚早だった」のだ。ある企業は「男も女も同じ」。だから女も男並みに働けと考える。別の企業は「女はすぐ辞める」。だから投資しても無駄だと言う。営業を断られる日々が続く。

あきらめて女性に限定せず、しばらくは普通の営業研修を手がけることにした。会場に集まった100人のうち女性は1人か2人。「これでは需要は無いはずだ」と実感した。彼女たちの先輩はゼロ。「もう辞めようと思っている」と相談を受けることも多かった。

「そういう女性たちは、優秀で、結果を出している人が多かったんです」。企業にも損だし、営業に関して嫌なイメージが後輩や学生に伝わり、営業職女性は増えない。やっぱり何としても女性営業職の育成を頑張ろう。改めて誓った。

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