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女性ならではの「売り方」指南 営業ウーマン育てる

女子力起業(6)

編集委員 石鍋仁美

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NIKKEI STYLE

体力勝負の男性とは違う、「戦わずして勝つ」売り方が女性にはできる。人材育成コンサルタントでベレフェクト代表取締役の太田彩子さん(38)は、そう語る。早大在学中に出産し、子供と生きていくため編みだした女性営業職ならではの技術と哲学。それを若い女性たちに伝え、営業ウーマンを育てようと活動する。「女性って、営業職に向いているんですよ」。経営者の方たちにも気づいてほしいと願う。

10月7日月曜夜。「営業職」での就職に興味を持つ女子大学生たちが太田さんの研修を受けていた。新規開店した書店の店員として、近所の美容院に雑誌の定期購読を売り込むという設定だ。太田さんは美容院の店員役。頼りなげな営業トークを遮り「あ、うちは買う店が決まっているので」。あえなく研修生は敗退した。

「そういうときは、どの店から買っているか聞いて。営業は情報収集の場でもあるんだから」。メモを取る学生。笑顔の作り方にも指導が入る。「暗い人の話を聞きたい人っている? あと、敬語は……」。明るい笑顔、軽やかな声で、初対面の人の心をつかむすべをてきぱきと伝授していく。「世の中って厳しいんだよー」とニコリ。

女性には女性ならではの営業方法がある

ふだんは企業で現役営業職の女性社員を相手に研修している。不動産、証券、自動車、食品。例外的な一部の企業や業界をのぞけば、女性はまだ少数派。部署や営業所の枠を超えて集まってくる。それでも、こうした研修事業が成り立つまでには増えてきた。年間6000人の女性営業職と接するそうだ。

実のところ、政府の調査でも、営業職の人気は低い。見方を変えれば、求人は多いが希望者が少なく、就職しやすい職種といえる。企業社会で女性がふつうに活躍するようになるには、女性営業職の増加が近道であり、不可避でもある。

なぜ不人気なのか。営業職といえば体力勝負で、土日も返上し、残業が多く、夜も接待をこなす。そんなイメージがないとは言えない。これでは子育てなどを考える女性が二の足を踏むのも無理はない。実はそんなことはない。違った営業のやり方があり、十分実績をあげられる。太田さんは自らの経験から確信している。

父は会社員、母は専業主婦というふつうの家庭に育った。しかし10代のころ、不動産会社を経営するおばから「女性も仕事を持つ時代になる。できれば起業しなさい」と言われた。「その時はピンと来ませんでした」。大学を卒業したら、何年かは共働きでバリバリ働いて、結婚して出産したら家庭に入る。そんな未来を想像していた。

転機は大学在学中の妊娠と出産だ。専業主婦生活は「自分が認められていない」感覚が募った。不動産関係の会社を立ち上げるも、「営業して売り上げをつくるスキルが全くなく」失敗。結婚生活それ自体も、長くは続かなかった。

卒業は1998年春。大手金融機関が破綻するなど、ふつうの新卒でも就職が厳しかったころだ。病気の子供を抱え、夫もいない。見つけたのが、リクルートが出していた「営業職」の募集だった。契約社員として、フリーペーパーの出稿(広告)を獲得するのだ。営業という選択肢は考えていなかった。しかし背に腹は代えられない。書類も面接も通り、働き始める。「あなたのような立場の女性は、強いから」。そんな上司の言葉に救われた。子供がいるから結果が出ないと思われたくない。頑張ろうと決めた。

がつがつせず、相手の役に立つ

しかし試行錯誤は続く。営業先は飲食店や美容院など。周りには優秀な男性の営業マンが大勢いた。成果が上がらない中で「彼らのまねをして同じことをしていてもダメだ」と感じた。じみでもこつこつやろう、と。

売ろう、売ろうと「がつがつ」するのをやめた。売らない。その代わりに相手の「役に立とう」と決めた。「商売が大変で」とやんわり拒絶されれば「そうですね」と共感を示し、営業トークはしない。店主に代わり、都内で人気の高い店や流行の髪形などを手製のリポートにまとめて届け、人気メニューを一緒に考えた。そうするうち、「あの子」が「リクルートさん」になり、「太田さん」へと呼ばれ方が変わり、相談を持ちかけられるようになった。

効率は悪い。しかし「人間関係を『効率よく』築くことはできない」と信じる。大口だけを狙い受注すれば、一時は利益が出ても、続かない。小さな店との信頼を、一緒に、時間をかけて大きく育てていく。「これ、子育てと同じなんです」。週末や深夜は仕事をしない。その分、平日の昼に仕事をてきぱきこなす技を身につけた。

営業先は中小企業が多い。実績が上がるようになると「起業しなさい」というおばの言葉が蘇った。社内の優秀者表彰に3回入ったら起業しよう。20代のうちに。そう決め、実行し、29歳でリクルートを辞めた。

女性営業職に特化したコンサルティングを開始。しかし今回も順風満帆にはいかない。「時期尚早だった」のだ。ある企業は「男も女も同じ」。だから女も男並みに働けと考える。別の企業は「女はすぐ辞める」。だから投資しても無駄だと言う。営業を断られる日々が続く。

あきらめて女性に限定せず、しばらくは普通の営業研修を手がけることにした。会場に集まった100人のうち女性は1人か2人。「これでは需要は無いはずだ」と実感した。彼女たちの先輩はゼロ。「もう辞めようと思っている」と相談を受けることも多かった。

「そういう女性たちは、優秀で、結果を出している人が多かったんです」。企業にも損だし、営業に関して嫌なイメージが後輩や学生に伝わり、営業職女性は増えない。やっぱり何としても女性営業職の育成を頑張ろう。改めて誓った。

女性営業職の武器は「共感性、協調性、親和性、勤勉性、繊細性、母性」だと太田さんはみる。力業でガンガン押すことが多かった男性的な営業手法とは、ちょっと違う道だ。特に若い女性営業職は、「感謝される」ことを生きがいにしている人が多いという。「人の役に立ちたい」「ありがとうと言われたい」という志向も強い。売り上げを棒グラフにして壁に張り、むち打つようなやり方とは違うモチベーションの向上法が必要になる。

時代も味方し、女性営業職も年を追って増えてきた。体力勝負の営業手法では、出産や子育てとの両立は難しい。男性とは分かちあいにくい悩みを、会社の枠を超え、女性同士で解決しよう。2009年、「営業部女子課」と題した集まりを各地で開催し始めた。

働くママたちと悩み、ノウハウを共有

結果を出すと男性の嫉妬を買い「色気を使っているんだろう」などと、いわれない非難を受ける。接待要員にしか見てもらえない。そんな悩みを語り合い、それぞれの職場に合った解決策を皆で考えていく。現在、会員は1500人まで増えた。プライベートも充実した「かしこカワイイ」生き方を目指す。

女性には「上を目指さない働き方」を楽しんでいる人も多いと太田さんはみる。「営業は楽しい。だからこの先も頑張る」と意欲にあふれつつも、「仕事だけでは嫌だ」と思う。ひと昔前の「キャリアウーマン」にはなりたくない、という願望が台頭している。「競争に巻き込まれる働き方は嫌」「家庭もプライベートも両立したい」という。

一方で「上を目指せない環境」もある。管理職やリーダーになりたいと思っても、周囲に前例がない場合などだ。

「営業部女子課」のような集まりで、他社の人たちと仕事と家庭の両立のノウハウを交換したり、リーダーとして活躍する人の前例に具体的に触れたり。そうして営業職で長く生きていくすべを身につけてほしいと願う。

10月5日には「営業部ママ課」もスタートした。子供のいる女性営業職に特化した集まりだ。第1回の会合では大半が子連れでの参加。会議室の床をはったり、子供達同士で勝手に遊び始めたり。その傍らで、時に子供をあやしながら、悩みやノウハウを共有していく。

食品もクルマも、使う人、選ぶ人の多数派は女性だ。女性の営業職からモノを購入した人の満足度は高いという調査結果もあるという。営業の現場で女性が活躍するようになれば、企業も、顧客も、働く人たちも、さらには職場や家庭の男性たちも、いまよりもっとハッピーになるはず。太田さんはそう考える。

 大勢の人に威張りたい。ライバルをつぶしたい。全国制覇、世界制覇をしたい……。そんな従来の起業家の原動力とは、全く違う志で起業やビジネスに取り組む女性たちが目立ちます。仕事を楽しみ、自分や周囲の悩みを解決するために起業し、共感や感謝の声を「次」への元気につなげる。そんな新世代の女子力起業家の生き方を紹介していきます。

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