経営は千本ノック 地味な作業の繰り返しNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹(2)

NPOを運営していると、「理想と現実のギャップ」を感じることはないか、と聞かれることがあります。今回は僕が考える「ギャップ」と、その付き合い方について語りたいと思います。

駒崎弘樹(こまざき・ひろき) 1979年東京都生まれ。99年慶応義塾大学総合政策学部入学。在学中よりITベンチャー経営に携わる。卒業後フローレンスをスタート、日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスとして展開。13年4月に内閣府「子ども・子育て会議」委員に就任。 一男一女の父であり、子どもの誕生時にはそれぞれ2カ月の育児休暇を取得。

NPOはボランティアではない

僕がNPOを始めた当時(今でもそうですが)、多くのNPOは基本的には「善意」ベースの運営がされていて、僕が「経営」という概念を持ち込んだことに対して嫌悪感を持っている人にも出会いました。

僕はビジネスサイドからきた人間だったので戸惑いましたね。お金のことを考えずにどうやって事業を持続していくのだろうか、と。戸惑いつつも「ああ、だからこの業界は全体として脆弱なんだな」とも思いました。

これは日本全体の課題だと思います。市民セクターは重要で、政府に代わって民間が担わなければいけない。けれども業界は育っていない。なぜなら「NPOはボランティアでなければならない」というような古いカルチャーが残り、事業が組み立てづらいからです。

裏を返せばこれはチャンスだと思いました。ここできちんと事業性を業界にインストールしよう、と。時代の要請はあるのだから、事業としてまわるようになれば、欧米のような頑強な市民社会に変貌していくかもしれない。だったら自分たちが事業として成り立つことを世に示そう。これはまさしく「フロンティア」じゃないか、と思いました。

見方を変えるとフロンティア、ってありますよね。ぱっと見た感じではただの荒野であっても、それを「未踏地が広がっている」と前向きにとらえられるかどうか。考え方次第だと思います。

理想と現実のギャップはあって当たり前

とはいえ実際に働き始めると、現実とのギャップに悩む人は多いと思います。それは自分の理想が大きいからではないでしょうか。

僕はあまり悩みませんでした。ソーシャルビジネスというのは社会問題の解決と事業とを両立させること。渋沢栄一的にいえば「論語とそろばん」の2つがないと成り立たないと思っていたので、お金の計算をしていてもあまり気にならなかった。

理想と現実のギャップはあって当たり前、と思っていれば、気にならないものです。そこで悩むのは時間の無駄だと思います。

むしろつらかったのは毎日の「千本ノック」。メールを書いて、人と会って、電話してお願いして、お金を計算して、トラブルを処理して……。それが365日続きました。