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元印刷工場は起業の秘密基地 「社会を変える人」育てる 女子力起業(5) 編集委員 石鍋仁美

2013/9/9

 東大で社会変革のノウハウを学び、大手シンクタンクでコンサルティングの実戦を重ねた。そんな女性が今年2月、起業家向けに新タイプの雑居型オフィスを開いた。英国で生まれた同種のオフィスの国際ネットワークにも加わり、「日本を変える起業家」たちを世に送り出そうと張り切る。

元印刷工場を改装したオフィスは起業家の卵たちの「秘密基地」(新世代の雑居式オフィス、HUB Tokyoを立ち上げた槌屋詩野さん)

 若手の「女性」経営者による、ベンチャー向けオフィスの新規開業。そう聞くと、ピカピカで小ぎれいな空間を想像するだろうか。実際は、全く違う。元印刷工場そのままの古い壁や天井。無造作に置かれたソファ、設備がむき出しのキッチンやカウンター。ずらりと並ぶ変則的な形の仕事用デスクは、本来は「客」であるはずの入居予定者たちが手づくりした「共同作品」だ。

 丸の内や六本木の新築オフィスビルとは全く違う空気。ドアも工場時代のものだから、一見オフィスには見えない。こうした空間が、未来を切り開く人たちの秘密基地といった感じを醸し出す。

■国際的ネットワークに接続した雑居式オフィス

 場所は東京・目黒駅近く。名称は「HUB Tokyo(ハブ・トーキョー)」という。英国を発祥の地とする新世代の雑居式オフィスの日本第1号だ。立ち上げの中心となった槌屋詩野さん(34)は、日本総合研究所で企業の社会的責任(CSR)や社会的責任投資(SRI)の分析、社会的起業やBOP(途上国)ビジネスのコンサルティングを経験。今度は自分たち自身が社会起業家となり、他の起業家を育成、支援していくことにした。

 運営スタッフは槌屋さんを含め7人。このうち日本国籍は3人だけ。20代後半から50代まで現在80人いる会員の1割は外国人だ。「日本語が自在に話せる優秀な人が多い。他の会員の刺激になっているはず」

 部屋には作業用のデスクが並び、起業家やその予備軍、フリーランスのデザイナーやコンサルタントなどが自由に使う。こうした形式のオフィスは「コワーキングスペース」や「シェアオフィス」と呼ばれ、2年前から日本でも急速に増えつつある。

 「HUB Tokyo」の違いは2点。1つは国際ネットワークに加盟していること。海外の「同志」とのやりとり、相互利用は会員の目を世界に向けさせる。もう1つは、それも手伝い、極めてエネルギッシュで意識の高い人々が自然に集まりつつあることだ。

オフィスの一角には休憩とコミュニケーションのスペースも

 「HUBは本質的な議論が交わされるのが特徴。誰かのアイデアに対し、周りの人は、ただ『それはいいですね』と言うのではなく、本当にやりたいのか、売れるのか、その後どうするのか、などと尋ねていく」。自分の根っこで考え、議論する場であってほしい。そのため、交わされる会話や対話の中身が本質的なものになるよう気を配る。「会員の方の人生にとって、何かのきっかけになる場にしたい」と願う。

 そのために、キッチンで日々交流を深め、イベントスペースに投資家を招き新ビジネスのプレゼンテーションコンテストを開く。すぐ隣に図書館や美術館、ジムやプールを備えた公園がある。桜並木の美しい目黒川も近い。クリエーティブな活動にはありがたい立地かもしれない。

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