「何ができるか」ではなく「何をしたいか」を探す
社会の役に立ちたい。でも自分に何ができるんだろう――。こんな風に思い悩む人は多いかもしれません。「駒崎は母親がベビーシッターをやっていたから病児保育の問題に縁があったんだろう」と思う人もいるでしょう。でも、縁は誰にだってあるんです。
僕は「自分に何ができるだろう」と考えて、自分の持っているリソースから逆算して起業したわけではないんです。そうだとしたら、IT企業の経営しかしていなかった僕に、保育なんて選択肢はなかった。何ができるかではなくて何をすべきかを考えたときに、病児保育にたどり着いたのです。
それでも、当時の僕は病児保育のスキルを何一つ持っていなかった。保育のことも、子どものこともわからなかったし、そもそも結婚もしていなかった。だけど本を読んだり人に会ったり現場で実習をしたりして積み上げていったんです。
ただ、「何がしたいか」が起業の要件だとしたら、「したいことがなければいけない」みたいな、ある種の夢の脅迫になってしまいます。そうではなくて、ちょっとでも興味を持っているものとか、好きなものとかで選んだらいい。誰もが確固として「こうなりたい、これをやるんだ」なんていうものを持てるほうが不思議だと思います。
企業も「世の中に役立っているか」が問われる時代に
今、若い人たちの間では、「とにかく社会の役に立ちたい」と考えている人が非常に多いように感じます。NPOやソーシャルビジネス業界を目指す人もすごく増えてきました。
では「ソーシャルビジネス」って何でしょうか。普通の企業と何が違うのでしょうか。企業だって社会の役に立っているじゃないか、と言われることもあります。
僕は、ソーシャルビジネスと普通のビジネスとは、地続きではあるけれど、それなりに境界線がある概念だと思っています。ソーシャルビジネスというのは、社会の課題を解決することを目的とするビジネスです。手段としてビジネスがあり、利益は目的ではなく、道具です。
ただ、普通のビジネスをしていても、その企業が社会の役に立っているかどうかという視点はこれからすごく重要になってくると思います。単に納税していれば世の中に貢献している、ということではなく、企業が社会性で選別される時代がやってきたのではないでしょうか。