「働く」とは他者を楽にすることNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹(1)

2013/9/17

僕たちはどう働くか

大きく変わる社会、多様化する価値観の中で、どんな仕事を選び、どのように働いていけばよいのか。連載コラム「僕たちはどう働くか」では、新しい働き方を模索・実践する若手起業家などからのメッセージを届けます。まず登場するのは、NPO法人「フローレンス」(東京・千代田)代表の駒崎弘樹さん(34)。慶応義塾大学在学中にITベンチャーの経営者として活躍しましたが、社会の役に立ちたいと一念発起。フリーターを経て病児保育を専門にするフローレンスを立ち上げました。ソーシャルビジネスの最前線を走り続けてきた駒崎さんが、働く意味や社会とのかかわりなどについて数回にわたって語ります。
駒崎弘樹(こまざき・ひろき) 1979年東京都生まれ。99年慶応義塾大学総合政策学部入学。在学中よりITベンチャー経営に携わる。卒業後フローレンスをスタート、日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスとして展開。13年4月に内閣府「子ども・子育て会議」委員に就任。 一男一女の父であり、子どもの誕生時にはそれぞれ2か月の育児休暇を取得。

人はなぜ、働くのでしょうか。僕自身、あまり深く考えたことがありませんでしたが、あるとき「働く」という言葉の語源を聞いてすごくうれしい気持ちになったことを覚えています。

家族を楽にすることも「働く」

諸説ありますが、「働く」の語源は「傍(はた)を楽にする」だともいわれています。「はた」というのは他者のことです。他者の負担を軽くしてあげる、楽にしてあげる、というのがもともとの「働く」の意味だったんです。

「働く」って今は賃金労働のことを指していることが多いと思いますが、昔はもっと広い意味で使われていた。家族を楽にすることも「働く」だし、地域のために雪かきをするのも「働く」。お金をもらってももらわなくても「働く」で、山で獲物を捕ってくるのも「働く」ことだった。働くっていくつもある。そう考えると働くって楽しいですよね。

僕は大学在学中の2002年、友人に誘われてITベンチャーの経営者になりました。続けていくうち、「自分は何をしたいのか」と考え、「社会の役に立ちたい」という自分の隠れた欲求に気付いて、卒業と同時にベンチャー社長をやめ、フリーターになりました。

なぜ病児保育だったのか。きっかけは身近な問題に気がついたことでした。

僕の母親はベビーシッターをしていました。あるとき、母親から「熱を出した子どもがいるお客さんが、看病するために会社を休んだら解雇されてしまった」ということを聞いたんです。そんなバカなことがあっていいのか。許せないな、と思いました。

子育てと仕事が両立できる仕組みを作りたい。そんな思いから、病児保育の問題に取り組むことにしました。今年で10年目になります。

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