東日本大震災の復興支援 今だからこそ行く意味複雑な課題、腰据えて取り組む

東日本大震災から3度目の夏。被災地への関心の低下を懸念する声をよそに、「これから復興に携わろう」と現地に向かう人がいる。求められる人材が短期ボランティアから、スキルや経験を持ち、地元に腰を据えて働ける人へと軸足が移ってきたことが転身を後押ししているようだ。震災直後ではなく、「今だからこそ」と一歩踏み出す人たちの思いや背景を追った。

支援は新段階に

ピースネイチャーラボに加わった鈴木さん(右)に代表理事の松田さんも期待を寄せる

「すべてがうまくつながった感じでした。会社を辞めてここに来ることに全く迷いがなくて」。宮城県気仙沼市の森と海に囲まれたログハウスの仕事場で、パソコンに向かう鈴木歩さん(33)は笑う。ファッション雑貨のデザイナーとして東京で働いていたが退職。8月上旬に故郷の気仙沼に戻って働き始めた。

新たな勤め先はNPO法人ピースネイチャーラボ(気仙沼市)。「ここの魅力は自然。その自然と人とのつながりをキーワードに復興のモデルを作りたい」と語る松田憲さん(35)らが立ち上げた。環境保全や自然体験教室の企画、地場産食材を使った商品開発を通じて地域の魅力を再発見し、復興にもつなげる「森里海工房プロジェクト」を仕掛ける団体だ。

鈴木さんは気仙沼を離れていた時期が長い。東京で夢だったデザインの仕事に就き、やりがいも感じていた。そんな時に震災が起き、実家は津波で流された。

震災直後は「とにかく戻りたい」と思ったが、いざ地元のために何ができるか考えても具体的なイメージが浮かばなかった。会社での仕事も中途半端にはできない。何もできないもどかしさを抱えて2年が過ぎ、たまたま参加した復興人材募集のイベントで松田さんの活動を知った。

求められた役割は気仙沼の自然の恵みを使った焼き菓子「森のクッティー」やカキの薫製など独自商品のブランドデザインだった。「ふるさとを元気にする手伝いができて、自分の経験も生かせる」と心が動いた。

松田さんも「商品を形にして魅力を伝えるスキルと地元に腰を据える覚悟を備えている。ぜひ彼女にとお願いした」。初仕事は9月中旬に全面刷新するオンラインショップのデザインだ。今は生産者を訪ねながらイメージを固める日々。来春にはレストラン開店の構想もあり、夢は膨らむ。

鈴木さんにも当てはまるが、今被災地に向かう理由として「これこそ自分の出番」と思える仕事が現地に生まれつつあることがある。時間と人手が必要なガレキ撤去などの作業は一段落しつつあり、地域の複雑な課題をそれぞれの経験やスキルを生かして解決する新たな段階に移っている。

NECで事業計画や予算管理を担当した東京都出身の陣内一樹さん(32)は、4月から原発事故後の住民避難が続く福島県浪江町の復興推進課で働く。「社会とのつながりを実感しキャリアも生かせる仕事がしたい」と考え、会社も出向扱いを認めてくれた。復興事業の進行管理や関係者との調整はこれまでの仕事と共通点も多い。

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