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アート&レビュー
クローズアップ

2013/8/20

クローズアップ

雨ににじんだ殴り書きの文字

グリーンステージにナイン・インチ・ネイルズが登場すると、いよいよ本降りになった。稲妻が何度となく夜空を切り裂き、ステージ背後の山々や客席を稲光が照らし出す。それにしても雨粒が痛い。数十人の子供たちから銀玉鉄砲の一斉射撃を受けているみたいだ。レインウエアの下に半袖のTシャツしか着てこなかったのは失敗だった。雨の冷たさが骨に染みてくる。

演奏会場近くのキャンプサイトで約1万7000人が寝泊まりした。ゴルフ場跡を利用して造られている

そうだ、メモをとらなくては。雨ニモマケズ。防水ハットのひさしを雨よけにしながら、さっとメモ帳を取り出し、前かがみになってペンを走らせる。メモを見直すと「明滅する光の演出」「山の背後でいなびかり」「ブレイクするとらいめい」「すごい」「自然が人工をこえる」など、雨ににじんだ殴り書きの文字が何とか読み取れる。

キャンプサイトでは1万7000人が宿泊

この雷雨で風邪を引いた人がたくさんいたようだ。記者は何とか無事だった。宿に戻って熱い風呂に入り、泥のように眠ったからだろう。キャンプをしている人たちは大変だったのではないか。今年は1万7000人が近くのキャンプサイトで寝泊まりしたという。

雨が降ると田んぼのようなぬかるみができる

翌日も最終日も、激しい雨が降った。会場のあちこちが田んぼのようにぬかるんだ。太陽がジリジリと肌を焼く時間帯も、やたらと冷え込む時間帯もあった。特に最終日の夜は雨はあがっているのに、レインウエアの上下を着込む羽目になった。屋台で食べたちゃんこ鍋うどんが冷えた体を温めてくれた。

「何だかんだ言って、楽しかったんですよね」と音楽関係者に聞かれて、「もちろん」と答えた。種々の苦行もまたフェスの醍醐味と再認識した。例えば、あの雷雨がなかったら、ナイン・インチ・ネイルズのステージはもっと平板に感じたかもしれない。悪天候から逃げ出してしまっていたら、今回のフジロック屈指の名場面は見られず、原稿も書けなかったわけだ。そう思うとゾッとする。来年は51歳。心して臨まねば。

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