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女性に人気の移動式カフェ、売り上げ倍増中

女子力起業(4)

編集委員 石鍋仁美

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NIKKEI STYLE

イベント会場や商業施設の入り口付近などにカウンターや屋根を仮設し、菓子や飲み物を販売する。4年前、愛媛県の松山市を拠点にそんな移動式カフェを始め、売り上げを年々倍増させている女性が岡村美佐さんだ。商品は多少高くてもおいしく。店構えは手づくり感覚でオシャレに。細かい工夫が女性客を引き付ける。そして菓子などを作るのは、さまざまなハンディキャップのある人たち。使う原料は地元のものだ。感度の高い人を引きつけ、街を楽しくし、社会貢献にもつながるビジネスを目指す。

客層に合わせて店をつくり替える

店の名前は「おでカフェ.」。「おでかけ」と「カフェ」をかけた造語だ。すてきな名前だと自負するが、看板を見た男性客から「あれ、おでんは無いの? と聞かれたことが、これまで何回かありました」と笑う。

スコーンが「チョコチップ」「黒ごまパンプキン」など各種あり、1個150円。はちみつレモンソーダが1杯300円。そのほかフェアトレードコーヒーや、ケーキの一種であるブラウニーなどを販売する。スコーンはオーブンを持ち込み、その場で焼く。1カ所の店を切り盛りするのは女性2人。岡村さんも店頭に立つ。

イベント会場なら主催者と綿密に打ち合わせ、客層に合わせ仕込む商品や飾り付けを決める。それでも、実際の状況は当日、その場に行かなければ分からない。天気。客の流れ。周辺の店。臨機応変に店をつくり替える。可能であれば場所も移る。

「人通りを見て、ほんの少し店の場所を移しただけで、2日目の売り上げが1日目の5割増しになったこともあります」。若い人が多いと見れば、安めのハーフサイズの飲み物を前面に打ち出す。「POP」と呼ばれる商品説明の張り紙をその場で作ることもある。画用紙は必携だ。

お客さんと会話するための工夫「仮設カウンター」

お客さんにはどんどん声をかけていく。移動式カフェというと、スタッフは車の中にいて、窓からコーヒーや菓子を渡す例が多い。「これでは、お客さんと十分な会話ができず、リピーターになってもらうのは難しい」。だからこその、仮設カウンター。屋外では上に屋根を張る。手間はかかっても、会話の機会をつくる方が大事だ。

「あ、前に××(別の会場)にもいたよね」。そんな風に言ってくれる固定ファンも増えてきた。催しを運営する側も工夫と積極性を見ているのか、新規出店の引き合いも多い。最近は、出店の7割は先方からの依頼だそうだ。

あるとき、隣に同様の店を出していた、経験の長い「経営者」が、店舗スタッフをしかりつける声が聞こえた。「隣を見習って、声を出しなさい」。その道のプロに認められた、と心の中でガッツポーズを作った。

モノを売る楽しさ知った展示会販売

岡村さんの出身は愛媛県の宇和島市。ある大手メーカーのグループ企業で事務職を経験。そのとき自社製品の展示会で販売を経験し、モノを売る面白さを知る。松山市にケーブルテレビ局が開局すると聞き転職し、営業職に。ゼロからのスタートで、ダイレクトメールなども手づくり。人を引きつけるものを作るのが自分は好きだ、と分かってきた。

その中でサザビー(現サザビーリーグ)の「アフタヌーンティー」という大手カフェチェーンが松山市に進出すると知り、アルバイトとして参加。「店長になりたい」と頑張り、1年あまりで店長に就任。当時はまだ20代。「このとき、きちんと研修を受け、人を育てる大切さを知りました」。新店立ち上げに参加するため、いったん松山を離れたものの、退社し独立。30代前半で松山市の中心部に飲食店「カフェドゥークール」を開業する。老舗商店街の2階だった。

「昔から、女の子にはモテた」(笑)という岡村さんのキャラクターに加え、2段ベッドを客席として使うなど工夫を凝らした店は、オシャレなものが好きで、リラックスできる空間を求めている女性たちを引き付けた。そうなると、さまざまな創作活動をしている人の注目も集まる。壁を個展用のスペースにあてる。そんな中で、知り合いの家具・雑貨店から「店で何かイベントができないか」と相談され、1日カフェを開くことに。ふだんは物販のための空間でコーヒーなどを出した。移動式カフェというアイデアの始まりだ。心地いい空間に身を置き、しゃれた家具で、おいしいものを口にする。非常ににぎわった。

愛媛県初の雇用型障害者就労支援事業所「まるく」との出合い

しかし、ほとんど休みなく働く中で、体力が限界に。店を閉じ、誘われて移ったのが現在の勤務先、まるく(松山市)だった。

まるくは愛媛県初の「雇用型障害者就労支援事業所」だ。岡村さんをスカウトした北野賢三社長が、自身が大けがをした経験をもとに、障害者自立支援法が施行された2006年に株式会社として設立。データ入力やサイト運営、清掃などの事業を請け負っている。社員の8割強、約75人が身体、精神、知的などハンディを持つ人たちだ。働く意欲のある人に、仕事を作り、他の企業への就職を支援し、給料を得る喜びを体験してもらいたい。そう願う。ビジネスという手法で社会問題の解決に取り組む1970年生まれの社会起業家だ。

岡村さんも当初、彼らの仕事を探す営業担当になった。しかし、この分野の経験や知識はほぼゼロ。成果が出せない。そんな中で、転職前からの約束で、1回だけ「おでカフェ.」を開くことに。「これだ」とひらめいた。2009年のことだ。

新事業として「おでカフェ.」のスタート

まるくの新事業として「おでカフェ.」を開始。菓子作りやパソコンによるデータ処理など、後方部門をハンディのある人々が担当し、接客は、岡村さんを含む、いわゆる「健常者」があたっている。いずれ接客の訓練をマスターできたら、ハンディを持つ社員が店に立つこともあるだろうと考える。

店頭で、特に何かを訴えるわけではない。お客さんは、普通に買い物をし、商品と一緒に渡される説明の紙を見て、店や会社の背景を知る。レモンやはちみつなどは愛媛県内産のものを使う。お客さんは楽しい経験の中で、自然に社会貢献ができるわけだ。まるくの社員が「おでカフェ.」を目当てに、人の集まる場所に来ることも多い。そんなときは、店を囲み、「普通の人」と「ハンディのある人」が、当たり前に1つの空間を共有する。

2012年の出店は92回。ほぼ毎週、1カ所か2カ所で店を出す。大半は愛媛県内だが、徳島県など県外に店を出すこともある。2014年からは四国・中国・九州地区で、各地の運営者がそれぞれの「おでカフェ.」を開けるような研修も事業として始める構想だ。

まだ自分1人でカフェを経営しているころから、ハンディを持つ人々を支援する団体などと交流があった。まるくの北野社長と知り合ったのも、その縁だ。そのころから、彼らの作った商品を見て、「いいモノでも、売り方や見せ方の工夫が足りない。もったいないなあ」と感じていた。自分の培ったセンスを生かし、しゃれた移動式カフェで、2つの世界に橋を架けられたら。そう願う。

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