インコの背中は魅惑の香り アイスや香水で楽しむ
文具や雑貨も好調
「昔飼っていたインコを思い出します」。アイスクリームを一口食べた男性(21)は少年時代を懐かしむ。アイスの名前は「セキセイインコアイス」(300円)。インコの背中から香るといわれる「晴れた日に干した布団のような独特のにおい」(アイスを販売する神戸市内の鳥カフェ「ぽこの森」)を再現した。
インコのにおいの源は「エサのにおい」(同)という。そこでアイスにはバニラ味に、インコの好むキビ、ヒエなどの雑穀やリンゴをブレンドした。食べてみると、まず、香ばしいにおいが鼻腔(びこう)をくすぐる。続いて雑穀の香ばしさとリンゴの甘さが口に広がり、普通においしい。
アイスは5月に大阪・梅田の阪神百貨店の催事で販売。事前にツイッターなどで告知したところ当日は開店前から行列ができ、10分で完売した。5月末からはカフェでの販売も開始し、これまで1日20組だった来店客は100組以上にまで膨れあがった。鳥好きのほか、商品自体の珍しさから「どんな味なのか一度食べてみたくて来た」(20代女性)客も多い。8月下旬からは通信販売も始める。
インコそのものの存在の地味さと相まって「人とは少し違うものを求めるお客さんに受けている」(ぽこの森)らしい。 また、今年2月には鳥モチーフ雑貨のネット通販「OKAMEN75」が「日を浴びたインコの背中の香り」を再現した香水「魅惑の背中」(1260円)を発売。こちらも月2回入荷し、1週間で売り切れる状況だ。
雑貨や文具でもインコの人気は高い。「鳥といえばひよこくらいしかイメージがなかったが、インコって案外カラフルでかわいい」と、多くの30代女性が生活雑貨「プレミィ・コロミィ」の各店にあるインコグッズコーナーに引き付けられる。
プレミィ・コロミィでは3年前、ウサギ柄、パンダ柄など約30種類の巾着を発売したところ、売り上げ1位は意外にもインコ。以来、徐々に種類を増やし、今年は前年の3倍の商品を販売する予定だ。「犬やネコだと定番すぎ、ウサギだとかわいすぎる。インコはちょうどバランスがよく誰にとっても使いやすい」(運営するJR東日本リテールネットの吉儀大史ブランドマネージャー)
インコはセキセイインコが圧倒的に有名で、犬種によって人気が分散する犬などに比べ商品が作りやすいのもポイント。店頭でもセキセイインコの商品さえ置いておけば、多くの客が「これ、うちのピーちゃんにそっくりと言って買っていく」(同)という。
文具メーカーのデザインフィル(東京・渋谷)も3年前から関連商品を販売、今は年間110種類の動物グッズのうち約半数がインコを中心とした鳥のデザインだ。「これまでなかった商品だけに、新鮮なかわいさが人気を呼んでいる」といい、今年はインコ表紙の手帳が、犬柄、ネコ柄合計の3倍以上売れた。
ペットショップでは本物のインコも売れている。鳥専門店を9店運営するこんぱまる(東京・台東)ではここ1年、インコの販売数が前年比約2割増。20万円程度の大型インコ「ヨウム」など知能の高い高額品種も売れるようになり、市場は拡大中だ。
ペットショップ大手のコジマ(東京・江東)によると、散歩などの手間がいらず、高齢者や忙しい家庭でも飼いやすいインコは今後も人気が高まるという。もっとも、古くから花鳥風月をめでてきた日本人にとって、インコはもともと親しみやすい生き物のはず。インコがいま羽ばたいているのも、さほど驚くことではないのかもしれない。
(高倉万紀子)
[日経MJ2013年7月10日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。