生産者や職人の手を経て世に出る真珠アクセサリーの多くは専門家のお眼鏡にかなったものであるはずだが、そこでユーザーサイドの嗜好とのギャップにぶつかることもあるという。

必ずしもピンクが似合うとは限らず

日本人の一般的な好みとして、ピンクで傷がないものを選ぶ傾向がある。ただ、その前に知っておいてほしいことがある、と森永さんは話す。

真珠生産の場でもピンクがいいとされ、黄みがかったものが出ると、その場で捨てられてしまうケースすらある。これはつまり、ユーザーサイドの“ピンク信仰”の反映。しかし、黄みがかった色みをハナから捨ててかかるのはもったいないことだという。「日本人の肌には黄味がかった方が似合うケースもありますし、個人個人でもどんな色みが合うか違ってきます」

真珠はまず「テリ」で選ぶ。予算次第では多少のへこみに目をつぶるという選択肢も

しわやゆがみなどの「傷」がなく、真円に近いのが望ましいのは当然として、実際、限られた予算のなかで購入を検討する場合、どこを優先するかが考えどころになってくるという。

真珠の輝きの基礎となる真珠層を厚くしようと思えば思うほど、成長に時間がかかり、その分傷ができる可能性も高くなる。

日本産の真珠はおもにアコヤガイに、球状の核を入れ、その上に真珠層を形成させる。

薄く真珠層を巻くだけでも、商品にはなるという。早めに取り出せば、真珠層は薄いけれど「貝と海」という自然条件に長くさらされない分だけ、傷がつきにくく、真球に近い核の形状も保たれやすい。逆に真珠層を厚くしようとすると、さまざまなリスクが高くなる。

傷への抵抗感は容易にはぬぐえないが「傷ができるくらい真珠層が厚い真珠ととらえると、それは“本物”のあかしにもなってくるわけです」(森永さん)。

宝石としての真珠を考えたときにもっとも重視すべきは「テリ」と呼ばれる輝きだという。

限られた予算のなかで購入するときにはまず「テリ」を優先し、少々のゆがみやへこみは「それもまた真珠の魅力として楽しむ」という考え方もあり、ということらしい。

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真珠養殖120年、日本ブランドの重み