芝耕作に草刈機まさお…農機、名付け親はダレジャ
筑水キャニコム、会長のダジャレ快調
商品名の名付け親は包行(かねゆき)均会長だ。ダジャレネーミングの効果を聞くと「バツグンですよ。へっへっへ」と目尻を下げる。
「初めて訪問する販売店でも、商品名の話題だけで30分以上盛り上がるんですよ」(国内営業本部の西村峰利本部長)。次期商品の名前のアイデアを持ち込む販売店や購入者も少なくない。
農作業用運搬車や草刈り機は数十万円から数百万円と高額。そのわりには人目に付かない場所で使われ、アルファベットや数字の商品名ばかりと地味な存在だ。「愛情を持って開発した商品の名称が堅苦しいと、商品に込めた思いがお客様に伝わらない」(包行会長)と1980年から商品名に凝り始めた。
調子づいたのは看板商品になった草刈機まさおだ。試作機のテストの際、その切れ味の鋭さに「どんな草でも真っ青」と感じた。草刈り機で真っ青――。ふと、福岡県出身の俳優、草刈正雄さんの顔が思い浮かんだ。
ほかにも、外出時に隣近所で「おでかけですか」と声を掛け合った昭和時代の触れ合いを表現した電動シニアカー「おでかけですカー」、草を刈るだけでなく、格好良く仕上げられる草刈り機「男前刈清(おとこまえがりきよし)」などダジャレ商品は200種類以上に及ぶ。
技術に関しては業界初、世界初にこだわり、社員が利用者のもとへ足を運んで意見を聞き、改良も重ねる。だが、いくら性能が良くても商品名が地味だと売れない。
たったひと言ですべてが伝わる、心が打たれる、耳に残って離れない――。ダジャレにはこうした要素を盛り込む。アイデアの源泉は「新聞や雑誌、テレビでニューヒーローを気にするが、女性週刊誌の芸能ネタは最高だね」(包行会長)。
気をつけているのは女性に嫌われないネーミング。顧客は主に農家で財布のひもを握るのは50~60歳代の主婦が多く、下品な名前はNGだ。
特許事務所との相談も欠かさない。商品名は有名人の名前や曲名が多いが、微妙に変える。母親のように安全・安心を感じてもらえる商品として名付けた小型特殊自動車「あぁ~おふくろさんョ」は、歌手の森進一さんの代表曲がベースだが、「あぁ~」と「ョ」を入れて商標をクリアした。
農業機械の国内市場は飽和状態だが、新興国では拡大が見込まれている。現在は欧米、アジアの40カ国で販売するが、目標は世界100カ国での販売。包行会長は海外でも通用するネーミングを日々考え続けている。
商品名 | 内容 | 名前の由来 |
---|---|---|
草刈機まさお | 乗用四輪駆動雑草刈り機 | 福岡県出身の俳優、草刈正雄さんにちなんで命名。事務所から指摘があったが、草刈さんのイメージを壊す商品ではないとして不問になったという |
主役 芝耕作 | 乗用四輪駆動芝刈り機 | 包行会長が自画自賛するネーミング。漫画「課長 島耕作」の主役はビジネスで大成したが、芝耕作は緑地の主役を目指す |
ブッシュカッタージョージ | 立ち乗り式の大型雑草刈り車 | 試作時に米同時テロが発生。「雑草除草の現場でも不法投棄などが多発」(同社)し、当時の米大統領にちなんで命名。海外でも販売 |
伝導よしみ | 発電機を搭載した運搬車 | 発電機を搭載していることから伝導という言葉を利用。演歌歌手の天童よしみさんの名前におやじギャグを活用 |
三輪駆動静香 | 配送用の電動アシスト三輪車 | タレントの工藤静香さんの名前をヒントに。電動アシスト機能を搭載し、エンジン音がせず静かなことからイメージした |
(倉本吾郎)
[日経MJ2013年6月28日付]
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