N
アート&レビュー
クローズアップ

やっと自分のペースつかみました 西本智実、不惑の指揮

2013/7/11

クローズアップ

「外国では、女性指揮者という前置きはほとんどありません」。西本智実(1970年生まれ)は過去の興味本位の報道を、うんざりした表情で振り返る。デビュー15周年を経て、「ようやく今、自分のペースで仕事ができるようになった」と手応えを実感する。

歌劇場の暗闇で「性差」を消した

昨年秋に結成し、芸術監督と首席指揮者を務めるイルミナートフィルハーモニーオーケストラとは今年11月、バチカン国際音楽祭にアジアの演奏団体として初めて招かれる。ミュージック・パートナーの席にある日本フィルハーモニー交響楽団ではアートディレクターの田村吾郎と組み、チャイコフスキーのバレエ音楽と高解像度の映像を組み合わせた新たな試みに挑む。今年5月にはロイヤルチェンバーオーケストラの音楽監督・首席指揮者にも就いた。「30代を無我夢中で走ってきた」なかで独自の道を究め、旧態依然のクラシック楽壇に新鮮な風を巻き起こしている。

指揮しているとき、性別を意識したことはない(撮影・大木大輔)

大阪音楽大学在学中から関西歌劇団はじめ、オペラ公演の副指揮者として現場で研さんを積んだことが転機となった。劇場指揮の先輩たちに勧められ留学したロシアでも、オペラの仕事をコンスタントに続けた。「私の中には『劇場で働いてきた』との自負がある」。

舞台手前の深い暗闇、オーケストラ・ピットでオペラを振ることには、意外なメリットがあった。「日本以外では指揮者の名前に『TOMOMI』と書かれていても、男だか女だか判然としない。今でこそ演奏家の服装も多様化したが、後ろ姿に落ち着きがある上、前が開いていて実際にタクトを振りやすい点で、伝統的な燕尾服は理にかなっている。特に女性らしい服をまとわず、舞台にもカーテンコールの一瞬現れるだけなので、指揮者が女性であることを強調されないで済んだ」

注目記事
次のページ
好奇の視線には、うんざり