2013/7/2

ダイレクトメッセージ

「自分で自分の始末をつけること」を教えるのがリーダーの本当の役割ではないか

そんな中にあって、根本さんが私に夢を語ってくれたことがあります。「オレは、王ダイエー対長嶋巨人の日本シリーズを実現したいんだ。それが野球界にとって何よりも大事なことだと思う」。自分の球団のことだけでなく、この人は球界全体の行く末を考えている……。私は、根本さんの人間の器の大きさを感じました。

根本さんは小久保裕紀、城島健司、井口資仁ら有望な若手を次々と補強していきました。99年に他界されましたが、その年にダイエーは球団創設11年目にしてリーグ初制覇・日本一を達成。翌2000年には根本さんの願った通りに日本シリーズで“ON対決”が実現しました。

基本をおろそかにせず、しんどい作業から逃げないこと。大きな夢を抱き、足元の準備を怠らないこと。交わした言葉は多くはありませんでしたが、広岡さん、根本さんからは、「プロとは何か」という明確なメッセージをいただきました。

サッカー日本代表の本田圭佑選手ではありませんが、私は本当に大切なのは「個」だと思っています。自分が何をすればいいのかを理解し、一人ひとりが実践すれば、それで十分だと。誰かに引っ張ってもらおうという気構えでいると、磨けば光る自分の潜在能力までしおれてしまいかねません。本来、自分で自分にリーダーシップを発揮できればいいのです。

だからこそ、私たちに「徹底的に自分で自分の始末をつけること」の重要性を気付かせてくれる「リーダー」「師」が必要なのです。広い視野を持ちつつ、プロ根性をたたき込んでくれるような良き導き。スポーツの世界でも企業社会でもそれが必要だと思っています。

工藤公康(くどう・きみやす) 1981年度のドラフト6位で名古屋電気高(現愛工大名電高)から西武に入団。落差のあるカーブと相手打者の心理を読んだ配球を武器に、大舞台に強い左腕として西武の黄金期を支えた。生活の乱れから一時成績が落ち込んだが、食事の改善や大学教授らと連携したトレーニングで低迷から脱却。86年から2年連続日本シリーズMVP。95年ダイエー(現ソフトバンク)にフリーエージェント(FA)で移籍、捕手の城島健司(引退)を育て、99年にチームを日本一に導き「優勝請負人」と呼ばれた。2000年には2度目のFAで巨人へ。07年から横浜に移り、10年に西武に復帰。同年オフに戦力外となり、11年12月引退を表明。プロ野球29年間で224勝142敗3セーブ。最高勝率、最優秀防御率各4度など多くのタイトルに輝く。1963年5月5日生まれ、愛知県豊明市出身。日刊スポーツ評論家。
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