LCCでアジア周遊 記者が駆け足で体験
成田
今回はLCCを使って6日間で5カ国を巡る弾丸ツアー。10日午前9時20分、成田空港着。イースター航空ソウル行きは11時50分発だが、LCCは欠航や遅延が多いと聞き、不安になって早めに足が向いた。
LCCは持ち込む荷物の大きさや重量を規定、上回ると課金される。記者のスーツケースを計測すると8.5キログラム。規定の7キログラムを超えたが「大丈夫ですよ」とスタッフに言われ、拍子抜け。飛行機も定刻で出発した。
ソウル
仁川空港着が午後2時35分。次の済州航空バンコク行きは8時5分。空港までの交通の便を知るため、都心部まで足を運んだ。
出発2時間前には戻る必要がある。ソウル駅まで往復で2時間弱かかるので都心部での滞在時間は1時間。ソウル駅到着後、タクシーで明洞へ。韓国料理タッカルビをかき込み、ソウル駅に戻ったが、空港への鉄道の乗り場が分からない。
観光案内所で尋ねると近くの済州航空のチェックインカウンターと出入国管理事務所を教えてくれ、利便性に感謝する。
済州航空の便には間に合ったものの、座席が狭い。座席の前縁から前席のシートポケットまでの距離は20センチメートル。大手航空会社より約10センチ短い。身長173センチメートル、体重63キログラムの記者が楽な姿勢をとると膝が前席にぶつかる。前席の背もたれが膝を押さえる格好で、座席の前縁が太ももの後ろ側を圧迫し、しびれてくる。
1機を効率良く使い回すLCCの座席は素早く掃除するため、汚れが落ちやすくクッション性も良い合皮か革張りが多い。ただ今回の済州航空の座席は布製。シートが硬く、座り心地は悪い。
バンコク
ソウル―バンコク間は5時間半。3時間を超えると時計ばかりが気になり、狭い座席から一刻も早く抜け出したい。初日の移動距離は5000キロ弱に及び、バンコク着は午後11時41分。ホテルのベッドに倒れ込んだ。
LCCは空港使用料を抑えるため、アクセスの悪い空港を利用する。2日目のエアアジアのジャカルタ行きは、国内線中心のドンムアン空港が拠点だ。エアアジアのカウンターの近くにはセルフチェックインの機器が並ぶ。わずかな作業でチェックインが完了。順番待ちの列に並ぶ必要がなく、ストレスを感じない。
ただ、搭乗時間の10時25分になっても搭乗機が現れない。ようやく10時49分に到着し、約10分で乗客を降ろし清掃も完了。11時に搭乗を開始する早業だ。LCCアジア最大手の意地を感じた。
ジャカルタ
ジャカルタには、ほぼ定刻の午後2時44分に到着。市内は排ガスがひどく、頭痛までしてきた。次のクアラルンプール行きライオン航空は翌日午後9時発。翌朝便に残席があったので、先を急ごうと英語を使い電話で問い合わせるが結果は「ノー」。大半のLCCが購入後の変更は認めておらず、ライオン航空も例外ではなかった。当初予定の便でクアラルンプールへ。
クアラルンプール
4日目は予備日。今回のルートは航空経営研究所(東京都府中市)の森崎和則主席研究員に路線ごとに異なるLCCを組み合わせて考えてもらった。LCCは基本的にキャンセルできない。「余裕のない日程で序盤で欠航すると、それ以降の購入した航空券が無駄になる」という森崎さんのすすめで予備日を設けた。
クアラルンプール国際空港のLCC専用ターミナルはメーンターミナルからバスで約20分、免税店もほとんどない。タイガーエアウェイズのシンガポール行きは座席も狭く、背もたれの角度は直角に近かったが、1時間だったので我慢できた。
シンガポール
LCCにもビジネスクラスがある。エコノミークラスに約1万円の追加料金を払い、成田行きのスクートに乗ってみた。座席前縁から前席シートポケットまでの間隔は51センチメートルとゆったり。搭乗時間は約7時間だが、苦痛は感じなかった。エコノミー席を見ると、背の高い男性は膝が前席の後部に当たり、足も組めない。
無事帰国したが、欠航や遅延はなく定刻より早い発着があったほど。荷物は11キログラムまで増えたが課金されることもなかった。航空券(燃料サーチャージや税金など諸費用込み)は計11万3120円。旅行会社経由で大手航空会社を使うと約21万円かかる。空港やターミナルの不便さはほとんど気にならず、サービスも十分満足。座席も2~3時間以内だと快適に利用できることを実感した。
ネット予約は煩雑
LCCは低運賃を実現するため店舗を持たず、航空券はインターネットのサイトで購入する。ただ、この購入方法が何とも煩わしい。LCC初体験の記者も苦戦を強いられ、すべて購入するのに半日かかった。
日本航路を持つLCCは日本語サイトがある。その他のLCCでも英語など現地語以外のサイトを設けており、辞書を引きながら購入は可能だ。だが、随所に落とし穴が待っていた。
座席指定の画面が現れ、不用意に指定してしまい、危うく座席指定代が課金されそうになった。チェックを外さないと、必要がないのに航空傷害保険も加入させられる羽目に。エアアジアのサイトではチェックの外し方が分からず、仕方なく加入した。LCCは運賃以外の収入が総収入の2~3割を占め、こうした付帯サービスは収益源のひとつだ。
パスポートとクレジットカードを手元に置き、名前や日にちなど間違えないように慎重に入力していく。サイトを行きつ戻りつしながら入力するが、一定時間内に完了しないと入力途中でも閉じてしまうLCCもある。
コールセンターに問い合わせても、なかなかオペレーターにつながらない。積み上がる通話料を考えると、本当に格安なのか疑問もわく。
日本のネット通販でカード決済の場合、カード番号と有効期限だけでなく、裏面の数列「セキュリティーコード」を要求されることがある。LCCの航空券購入では、さらに「3Dセキュア」と呼ばれる個人で設定するパスワードの入力が求められる。
カード会社のサイトを通じて即登録できるが、日本ではまだ認知度が低く、記者も最初は何のことだか分からなかった。
また、ブラウザー(閲覧ソフト)によっては、入力途中でエラーに。記者が普段使うグーグルの「クローム」では購入できないLCCもあり、米マイクロソフト「インターネット・エクスプローラー」を利用することで乗り切った。
LCCの航空券購入は、時間と心の余裕があるときにした方が良いだろう。
(倉本吾郎)
[日経MJ6月21日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。