アンジェリーナ・ジョリーが受けた乳房切除とは

米国の保険制度では乳房を切除した場合、再建までカバーすることが法的義務となっている。乳房を失う女性の心理に配慮したもので、それだけ深刻な問題だといえる。にもかかわらず、切除に踏み切るケースが増えている背景にはこの数年の急速な再建技術の進歩があるという。

比較的外科的治療に抵抗感の薄い米国でも乳房の切除については「barbaric(野蛮、荒っぽい)」な対処法と位置づける医者が少なくない。体への負担も大きく、切除に踏み切らずとも、年に2度ほどの検診など、早期発見で対処するという方法もあるからだ。変形BRCA保有者でも、切らずにこまめに検診する方を選択する女性も多い。

多くのドクターが“ジョリー効果”として認めたのは、「乳がんへの注目を集めたこと」「遺伝子が原因のがんがあることを知り、家族の病歴に関心を持つきっかけになること」だ。ただ、遺伝子検査だけでも3000ドル以上かかる。庶民が手軽に手を伸ばせる金額ではない。

ジョリーさんが受けた手術も、現地の報道によれば、総額で少なくとも2万ドルから5万ドル(入院費含まず)とされている。

乳がんであれば保険でカバーされる。しかし、予防的乳房切除プラス再建手術までカバーする保険となると、保険料も高額になる。

失業者に医療保険はなく、そしてパートタイマーも雇用者が医療保険を提供しないケースが多い米国では保険で守られない女性も少なくないとみられている。

「検査費用の高さがネック」と書いたジョリーさんの純資産は1億2000万ドルと報道されている。おそらくジョリーさんは今後、早期検査、治療の啓蒙活動も積極的に行っていくのだろうが……。

女性誌で「世界で最も美しい女性」に選ばれた美貌を持ち、スクリーンではマシンガンを振り回し、男顔負けの強さを見せつけてきたジョリーさん、私生活ではパートナーに恵まれ、養子を含め6人の子供を持つ。20代前半の破天荒さ、前妻からピットさんを奪ったイメージダウンも払拭、“完璧な女性”と羨望のまなざしを向けられる一方、セルフプロデュースにたけた女性ともいわれている。

最近はフィランソロピスト(慈善家)としての活動が目立っていた彼女、「がんに立ち向かう女」という新たな称号が加わった、と評する声も聞こえてくる。(ニューヨーク=原真子)