説明会では5人の無職経験者が自身の体験を踏まえたエピソードを披露した(4日、東京都杉並区)

ざっくばらんに議論が進むなか、会場からも質問が飛んだ。今春に大学卒業後、イベント派遣や清掃など無職に近い生活をしているという男性(25)は「周囲の目に耐えられる自信はどう身につけたのか」と質問。霜田さんが「大学の同期などと食事する際に、無職を強調するとおごってもらえる」などと応じ、場内が笑いに包まれる場面もあった。「心が折れることはなかったのか」との問いにも、「心が折れたから無職になった。でも、不安を超え尽くしてきたから今は大丈夫」(黒田さん)。

無職の強みは何かというテーマでは「時間があること」が強調された。「時間があることをアピールしていけば、人手が足りない時に『ちょっと手伝ってくれないか』と声がかかる。そうやって仕事を増やし、食べてきた」との意見も出た。

出演者の一人で大学生の菊池良さん(25)は中学卒業後に6年間の引きこもり生活を過ごした。大検を経て進学し、「世界一即戦力な男」というコピーで自分をPRするホームページを立ち上げ、企業から見事内定を勝ち取った。イベントの終盤に徳川家康など大器晩成型の偉人のエピソードを引き合いに出し、「50年後に勝っているのは自分」と会場を沸かせた。

「無職時代があるから、今の自分がある」

「無職時代があるからこそ、今の自分がある」――。出演者たちが訴えるメッセージは説得力がある。南アフリカで非政府組織(NGO)活動に従事し、現在、南ア観光ツアーを企画しているという男性(30)は「実用的な情報はやや不足していたが、無職を乗り越えた人たちにはそれなりのスキルがあるのだな、と感じた」と話す。「職場で嫌なことがあったが、前向きにがんばろうという気持ちになった」(20代の女性会社員)との声も。

イベントは休憩を2回挟み4時間に及んだ。途中で退出する人もほとんどいなかった。岡田さんは「今回伝えることができなかった部分もたくさんある。次回もまたテーマを絞った形で開きたい」と話す。

転職する人やこれから就職をする人にとっても、働くということの意義を見つめ直すことにもつながりそうだ。就職活動に失敗して自らの命を絶つ若者もいる。無職という状態と向き合った人の話を聞くだけでも、少しは心にゆとりが出てくるのではないかと感じた。

「無職」について考えるイベントは、決して無職を称賛したり奨励したりするものではない。政府の産業競争力会議も成熟産業から成長産業への人材移動を後押しする雇用制度改革の骨格を決めた。人材の流動化が進むにつれて、一時的に「無職」の立場に置かれる人も増えるだろう。肩身が狭いと思われがちな無職だが、「取り組み方や考え方次第でこんなにポジティブになれるのだ」と私も気付かされた。イベントを終えて会場を後にする人たちもすっきりとした表情だった。(村野孝直)

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