外れにくいピアス留め 彼氏との大げんかから女子力起業(1)編集委員 石鍋仁美

2013/5/13
外れにくいピアス留めの「クリスメラキャッチ」を開発したクリスメラ(東京都文京区)の菊永英里代表

まずクイズをひとつ。「どこかで半分なくしたら、役には立たないものがある」。さて何でしょう。実はこれ、シンガーソングライター・松任谷由実さんの歌の一節。題名がそのまま答えだ――「真珠のピアス」。

別れる男の部屋に、落としたふりをして自分のピアスを片方忘れていく。新しい彼女に見つけさせるために。そんな詞だ。都会で働く女性の日々を描くアルバム「パールピアス」の1曲として1982年に発表された。

「ピアス留め」外れやすさに嘆く女性たち

「OL」と呼ばれる女性たちの存在感が年々増していたころだ。アイドルの松田聖子が男性作詞家による「ハートのイヤリング」をかわいらしく歌ったほぼ同時期、ユーミンは大人の女の象徴に、日本でも普及し始めたピアスを掲げ、OLたちの共感を得た。

イヤリングと違い、ピアスは耳に開けた穴にピンを通し、留め具で固定する。親からもらった体に穴を開けるところも「大人」を感じさせるわけだ。

一見落ちにくそうだが、知らぬ間に留め具が緩み、紛失して嘆く女性は当時から多かった。だからこそ冒頭の歌詞も成り立つ。お気に入りのピアスほどつけるのをためらう向きが利用者の4割もいるそうだ。この女性たちの悩みを宝飾・アクセサリー業界は30年間、放置してきた。

彼氏からプレゼントされたピアスをなくしたことから、外れにくい留め具の開発を思いついた

これはビジネスの種になる。8年前そう考えた女性がいた。菊永英里さん、当時24歳。発端は彼氏とのケンカだった。

「お前ががさつだから、オレがプレゼントしたピアスをなくすんだ」。交際中の彼氏が怒っている。「外れやすいピアス留めが悪いんだよっ」。言い訳めいた自分の言葉でひらめいた。「外れにくいピアス留めを作れば売れるのでは?」。そのころ菊永さんはIT企業の会社員。しかし頭の中では、すでに9年間も起業のアイデアを考え続けてきた。理由がある。

話は高校生のころにさかのぼる。「危険だから」と両親にアルバイトを禁止され、自宅でビーズのアクセサリー作りに精を出した。最初は図面通りに作って1個250円。「すぐ新しいことを始めたくなる性格」から、間もなく自分でもデザインし始めた。

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「私、社長になるわ」父への事業計画書