国内外でインフラづくり
東京・練馬区。目白通りの地下約40メートルで、台風や豪雨に備えて雨水をためる3キロのトンネルを掘る工事が進行中だ。ドドドー、バーン。工事音が鳴り響く中、155センチほどのショートボブの女性が巨大なくいの上に立ち、男性作業員らに指示を出す。「ベントナイト(泥水)を打ちまーす」
大成建設の小松祥子さん(31)は約40人の現場でただ1人の女性技師だ。地下深くを掘る作業は時に上から水圧をかけたり泥水を入れたりして、くいが下にすべり落ちやすくする必要がある。遠隔操作室でデータを見ながら指示を出すのが小松さんの役目だ。
土木の技術者の父に、建築家の祖父。家族に連れられ氾濫した後の川を見に行った。「わたしもインフラをつくり人の暮らしを支えたい」。小学生の時、こう決めた。
午前7時に現場に入り午後9時まで働く。体力的にはきついが、「工事が計画通りに完成した時は何とも言えない喜び」。昨年結婚し、家庭と両立させながら現場経験を多く積み「現場を指揮する立場になり、1つでも多くの役立つインフラをつくりたい」と目を輝かせる。
大成建設には小松さんを含め約70人の女性土木技術者が働く。10年で3倍以上増えたという。活躍の場が増えたことで裾野も広がっており、土木学会の女子学生の会員数は574人(3月末)に達し、07年に比べ200人以上増えた。
国内だけではない。総合建設コンサルタント会社のオリエンタルコンサルタンツの佐々優子さん(45)は都市計画や建築の技術者。30代前半にアフガニスタンやスリランカの復興支援に、07年~11年にはカタールに駐在し政府発注の都市プランをつくる仕事に参画した。
今は日本を拠点にベトナムやイラン、インドの教育や防災などの案件に携わる。「ひとつの国の将来像をもきめる大切な仕事」と実感を込める。
折しも公共事業が復活し、政府は女性の活躍を後押ししようと意気込んでいる。ドボジョへの追い風があちこちで吹いている。