巨大な牛カルビ・こぼれるイクラ 外食「豪快」で売る
話題性、複数での来店促す
「インパクト忘れられない」
東京都足立区北千住の商店街。昼時のランチで異彩を放つのが居酒屋「てまえの一歩」が出す「のっけ寿司」だ。1260円とランチとしては安くないが、目当てに訪れる客足が絶えない。
茶わん1.5杯分のごはんとタクアン、キュウリの巻きずしが8個。その上にウニ、イクラのほか、ネギトロ40グラムやほぐしたズワイガニ30グラムをこぼれるほど載せる。
以前に他の客が食べているのを見て頼んでみたかったという若葉友子さん(50)は「このインパクトが忘れられなくて」と笑顔。「ぜいたく気分を味わえる」と母親と分け、完食していた。
庶民的な町の北千住で千円超えのランチ。店長の佐藤未希子さん(24)は、昨年8月の発売当初「全く売れなかった」と振り返る。「一度見て食べてもらえばリピーターが増えるはず」と販売を続け、今や1日に20食ほど出るように。以前は30人前後だったランチ客が倍増。9割は主婦だが、シニアにも人気だ。
原価率が6割ともうけは少ないが、佐藤さんは「気に入ったお客さんが夜も足を運んでくれるようになった」と効果を強調する。
焼き網からはみ出る肉
電通総研の大屋洋子主任研究員は、こうしたメニューについて「とびきりのぜいたくはできないが時には気分を上げたいと、イベント感や特別感を身近な食に求めるようになった」とみる。
ふたご(東京・品川)が運営する焼肉店「大阪焼肉・ホルモンふたご」では1枚250グラムと特大の「名物黒毛和牛のはみ出るカルビ」(1575円)が人気だ。鹿児島など国産の黒毛和牛のリブロースを使い、1枚でカブリ、ゲタなど4つの部位を味わえる。
3月上旬の週末の午後、目黒店(同)を家族6人で訪れた都内の栗原麻美さん(27)は「網からはみ出るなんて」「手のひらより大きいね」と、子供と歓声を上げた。昨年末ごろから肉の確保が追いつかず、現在は1日10枚のみ提供。「数時間で完売する」(同店)
東京都立川市のワインバー「フラットカフェ」の名物は「男の肉盛り合わせ」(3360円)。4人机を覆うほどの大皿に、フライドポテト500グラムと、焼き上げた牛、豚、鶏の3種類の肉計1キログラムを盛る。
同店を運営する中沢隆文さんによると、4~6人で訪れた客からの注文が多い。料理が出てくると店内全体が盛り上がり、客のワインを飲む量が増えるという。
博報堂生活総合研究所の山本泰士主任研究員は、「豪快な盛り付けの料理を囲めば自然と会話が弾む」と語り、「家族や友人と絆を深めたいと思う需要をつかんでいる」と分析する。
SNS「口コミ」に期待 店内での撮影・投稿促す
2月下旬、東京・お茶の水の「ロッテリア」が周辺の大学生らでにぎわっていた。彼らの目当ては「はみだしエビバーガー」(500円)。2月22日に発売した期間限定品だ。通常に比べ、具材の長さは2倍の15センチ、重さは約3倍の180グラムに達する。
揚げ物などを作る「フライヤー」の都合上、「これ以上大きくするのは無理」(ロッテリア)。単に巨大にしただけではない。3カ月かけ、崩れにくい具材の形や素材、味付けなどを検証。調理工程も見直し、2種類のソースで飽きずに食べ切れるようにした。
昨年10月に規格外商品として最大5段重ねにできる「絶品タワーチーズバーガー」(500円)と「エビツリーバーガー」(同)を発売。売れ行きが計画を5割上回る好調だったため、第2弾を投入した。
ヒットは「SNSの口コミ効果が大きい」。店頭でスマートフォン(スマホ)などにより写真に撮る客が続出。フェイスブック(FB)やツイッターに投稿し、それを見た人が来店する好循環が生まれた。
そこで今回は、自社FB上でも、はみ出しエビバーガーにかぶりつく写真を募集。店頭に実物の約4倍のポスターも掲げ、狙い通り撮影する客が目立つ。(小川悠介、柴田聖也、中藤玲)
[日経MJ2013年3月6日付]
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