MONO第40回公演「うぶな雲は空で迷う」軽妙なやり取りの奥に生きる切なさ

笑えるのだが、少し切ない。劇作家・演出家の土田英生が、自身が代表を務める劇団「MONO」に書き下ろした新作「うぶな雲は空で迷う」はそんな一作だ。

場面設定は飛行船の中(撮影・谷古宇正彦)

今回は節目の第40回公演とあって結成24年になる劇団の来し方を作品の“隠し味”にして、「生きること」という大きなテーマに挑んだようだ。だが、そこは大学生の時に落語研究会に入りかけた土田だ。作品全体を軽妙なやり取りで覆い尽くし、テーマ自体を簡単には露見させない。だから、見終わった後、切なさが残る舞台になった。

物語は大陸が無くなって海と島々だけになった時代に、飛行船で行き来する5人組の弱小窃盗団の話。でかい仕事をするために3人組と2人組が引っ付いて作った窃盗団で、仲間内では「やってやろうぜ。世界に俺たちの名前を刻もう」などと大きなことを言っているが、目的地にすら迷って行き着けずにもめている。しかも、その理由は「嘘をついたろ」「誰がリーダーか」といったしょうもないことばかりだ。

軽妙なやり取りが会場の笑いを誘う(撮影・谷古宇正彦)
目的地に行くのにも迷ってしまう(撮影・谷古宇正彦)

しょうもないことでもめてばかりの窃盗団(撮影・谷古宇正彦)

しかし、この「しょうもないことばかり」が実はくせ者。飛行船の中という場面設定を職場や学校に置き換えると、たちまち見ている者の周囲で日々起きているつまらないいざこざに重なって見えてくる。過去の失敗を振り返るコント仕立ての場面などは、少しでもより良い結果を求めて人々が思案する姿にかぶる。土田はかつて「昔は人には言えないような恥ずかしいことで劇団員とケンカしていた」と言っていたから、MONOの内部もある時期はそうだったに違いない。

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