ムースやケーキに花びら 春爛漫「桜スイーツ」

●ちなみに――桜への愛情は日本人のDNAに

桜スイーツは世界の「オンリーワン・スイーツ」

桜の季節になると和菓子店だけでなく、様々な洋菓子店の店先に桜をイメージしたスイーツが並ぶ。日本ではもはや当たり前となっている風景だが、実は世界中のどんな菓子店をまわっても桜を使った菓子は取り扱っていないそうだ。その意味では世界の中の「オンリーワン・スイーツ」と言っても過言ではない。

海外で桜スイーツがない理由をシェフに尋ねると「手間がかかり、使い方が難しい」「取扱期間が限定される」といった理由もあるようだが、大きな理由が桜に対してここまで特別な思い入れを持つのが日本人だけだからだそうだ。確かに中国や台湾、韓国、アメリカなどにも桜の木はあるが、桜をテーマにした料理すら見かけることはほとんどない。

実際、日本人の桜への思いは深くて古い。今から1000年以上も前の日本人も、桜に思いをはせていた。古今和歌集の中にある「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」(在原業平)という有名な歌。この世の中に桜がなかったら、開花を焦がれたり、散るのを惜しんだりせず、のどかに春を過ごせるのに……。それほどまでに桜に心躍らせる心情をつづった歌だ。何と見事に日本人の心を言い当てていることだろうか。

咲き始めには春の訪れ、新たな出会いを感じ、散り際には旅立ち、哀愁を感じ取る。豊かな自然と四季の移り変わりを日々の生活の中で体感してきた日本人だからこそ生まれた思い。もはや桜に対する愛情、愛着は日本人のDNAに刻まれているのかもしれない。

●記者のひとこと――飲んで楽しめるのも桜の魅力

花見を盛り上げるネタにいかが?

今年も本格的な桜のシーズンがやってきた。ソメイヨシノの開花は例年よりもかなり早い。神社仏閣、城跡といった桜の名所を見て回るのも好きだが、私にとって何より待ち遠しいのが花見の宴会だ。桜の下にブルーシートで場所をとり、酒とつまみで盛り上がる。時には自分が何の話をしたのか覚えていないこともしばしば。何やらいい気分だったことと、二日酔いの頭痛だけが後に残る。お酒が好きな日本人なら、誰もが花見の宴会でこうした経験があるだろう。

ただこの季節の花見の宴会は、外国から来た人にとっては奇異に映るらしい。以前、香港から遊びに来た友人を花見の宴会に誘ったところ「寒いのに何で外で飲むんだ」「みんな桜を見てないじゃないか」と突っ込みが入った。言われてみると、この季節はまだ肌寒い。しかも桜を見ることより仲間と酒を楽しむことが目的となっている。

そんな冷静な外国の友人に対して、酔った別の日本人が「細かいことはどうでもいいよ。とりあえず飲もうぜ」。明確な答えはないが、桜の季節は楽しめばいいのではないか。そんな明るい気分でいられることが花見のメリットなのかもしれない。花見を楽しむためには、盛り上げのネタも重要。今年の花見は日本限定の桜スイーツがいい仕掛けとなるかも。

(高田倫志)

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●「日経スイーツ選定委員会」とは

専門委員と日経記者で構成。専門委員は豊富な経験に基づいた通らしい視点で、記者はビジネスパーソンとしての素直な視点で評価。まず、専門委員の意見を参考に書類に基づく第1次審査を実施し、10商品を候補に選定。次に、厳選された10商品を実際に全員で食べ比べ、専門委員の意見を中心に合議制で「3つ星」「2つ星」「1つ星」を決める。

●専門委員の横顔(五十音順)

下井美奈子さん

1973年生まれ。実家の母が菓子教室講師ということから、子どもの頃からスイーツの食べ歩きや菓子作りを行う。一般企業を退職した後、パリの料理学校「リッツ・エスコフィエ」で料理・製菓の資格取得。またパリの製菓料理学校「ル・コルドン・ブルー」「ルノートル」で学び、2年間のロサンゼルス在住中にも各国の製菓・料理を習得。情報サイト「オールアバウト」では立ち上げの2001年から、スイーツガイドを担当。多数のメディアで洋菓子情報を紹介するほか、商品開発、レシピ提供を行うスイーツコーディネーターも務める。共著に「TOKYO美食パラダイス」など。

下園昌江さん

1974年生まれ。大学卒業後、専門学校やパティスリーで製菓の技術や理論を学んでおり、製法にも詳しい。お菓子の食べ歩き歴は15年。近年は特にフランス菓子に力を入れ、フランスを巡るツアーや焼き菓子を中心としたお菓子教室も開催。監修本に「とびきりスイーツ見つけた!」。ウェブサイト「Sweet Cafe(スイートカフェ)」主宰。

平岩理緒さん

1975年生まれ。小学生のとき、訪れたデパートでスイーツの魅力に目覚める。大学卒業後、食品会社のマーケティングに携わる。2002年、テレビ東京の番組「TVチャンピオン」デパ地下選手権での優勝を機に、食の情報発信を本格化。退社後はフリーのフードコーディネーターとして活躍中。月に食べるお菓子は100種類以上。和菓子店での勤務経験もあり、和、洋菓子全般に詳しい。著書に「アフター6のスイーツマニア」(マーブルトロン)。コミュニティーサイト「幸せのケーキ共和国」主宰。