はずし、追放、スルー…通話アプリが誘引する子どものいじめ

「はずし」「追放」「スルー」……。これが何を意味するかわかれば「無料通話アプリ」通だ。このアプリはスマートフォン(スマホ)などで、通話料がかからずに会話やチャットが楽しめる便利なもの。だが、子どもたちにも急速に普及した結果、冒頭に挙げたような行為で人間関係に悪い影響を及ぼす例が出てきた。

東京都板橋区の中学3年A君(15)はこの夏、念願のスマホを手に入れた。英検3級に合格したご褒美だ。早速、友人がみんなやっている無料通話アプリをいれ、チャットを始めた。同級生10人ほどで作ったグループ内で、他愛もないやりとりを交わす。

画面上に吹き出し風の文字が次々に現れ、下から上へ流れる。複数が参加して「会話」を楽しめる(「LINE」の画面)

「楽しいのでやめられない」

「おなか減ったああ」

「2組の子、かわいくね?」

「テスト、めんどくせ」

チャットは文字だけで行う短い会話のやり取りだ。言葉を打ち込むと、画面上に漫画の吹き出し風の文字が次々現れ、下から上へ流れていく。同じ画面に同時に複数の参加者が書き込めるので、実際に会話している感覚だ。

時たま、内容に合わせて「スタンプ」と呼ばれるイラストが挟まれる。熊やうさぎなど多彩なキャラクターから選ぶことができる。例えば「テストの点が悪かった」との書き込みなら、落ち込む熊を添えたりできる。

A君はやりとりにはまり、アプリをする時間が増えた。「10回ぐらいオール(徹夜)した」。携帯電話の持ち込みが禁止されている学校でも、授業中に先生の目を盗んでチャットを続けた。「成績は下がった。受験前にやばいという自覚はあるが、楽しいのでやめられない」

無料通話アプリには、韓国系企業が提供する「LINE」「カカオトーク」、欧州生まれの「スカイプ」、モバゲーで知られるDeNAが10月に始めた「comm」などがある。だが利用者が圧倒的に多いのは、昨年6月にサービスを開始したLINE。運営するNHNジャパン(東京都渋谷区)によると、国内で3600万人が使用している。

かわいいスタンプを使えるのが魅力で、未成年にも広がる。デジタルアーツの11月の調査では、10~18歳618人中、LINEの利用者は22.5%。男子高校生は37.9%、女子高校生は54.4%にも達する。

いじめ行為の相談増える

ただ無料通話アプリは、A君のような依存状態に陥るケースがあるうえ、友達関係も揺さぶる。ネット上のトラブル相談を受けている全国webカウンセリング協議会によると、LINEに関する相談が今年になり増えてきた。多いのはいじめ行為だ。

・都内のある中3男子は、チャットを楽しむために友達と作ったグループから突然強制退会させられた。「はずし」「追放」と呼ばれる行為で、気にくわないと思う人がいたら退会させることができ、しかも誰が退会させたかわからない。「嫌われている」と感じて学校に行けなくなった。

・南関東のある中3男子は、文化祭で仮装した写真がLINEで出回り、自分の知らない人にも見られてしまった。投稿画像は削除できないためショックを受け、不登校になった。