昼間からカニ・ウニ天国 札幌の絶品すしランチ出張グルメの達人・札幌編

すしには「夜のごちそう」というイメージがあるが、札幌には日の高いうちから、抜群にうまいすしを手ごろな値段で食べられる店がある。魚を扱うプロも舌鼓を打つ市場の店から、地元の人々に愛される街中の店まで、昼からにぎわう名店を巡った。

ランチにお薦めというと語弊があるかもしれない。札幌市の台所、中央卸売市場に隣接するビルにある鮨の魚政(うおまさ)は朝6時半に開店し、正午には店じまいしてしまう。むしろ朝食向けといった方が正確か。

それもそのはず、もともと市場関係者を相手に商売を始めた店なのだ。食材の目利きたちに長年愛され続け、今では道外から訪れる観光客の姿も目立つ。

市場関係者もうなる味

店主の石原正夫さんは東京や札幌のすし店で腕を磨き、18年ほど前に独立して今の店を開いた。中央市場は札幌のすし店で働いていた頃から頻繁に仕入れに訪れていた場所。店で出すネタは毎朝、その日に使う分だけを仕入れ「売り切れれば終わりです」。地元客の来店が多い土曜日などは午前11時前に閉店となってしまうこともあるという。

座席はL字型のカウンターに9席のみ。目の前のケースに並ぶあざやかなネタをみて一瞬「高級店か?」とたじろぐ人もいるかもしれないが、注文伝票を見て安心する。

価格は1貫84円から。最も高い大トロでも420円だ。これは安い。開店以来、「値上げはしていません」と石原さん。どれを注文しようか目移りしたあげく、常連客にならって「お任せ」で頼んでみた。

イカ、ソイ、ホタテ……。手際よく出てくるすしには、どれも煮きりしょうゆが塗ってある。だからそのまま口へポイ。小ぶりのシャリとの相性は絶妙だ。奥さんの輝美さんから受け取ったノリのみそ汁にほっとする。

ネタがなくなると午前11時に店じまいということもある「鮨の魚政」

ボタンエビやトロ、ウニといった高級ネタが次々と皿に載り、10貫は食べたか。会計は2500円ほどと、お得感は十分だ。「若い人もよくみえますよ」というのは当然だろう。

「どう、体調よくなった?」「足場が悪いから気をつけて帰ってね」。店内では、市場関係者とみられる常連客らへ石原さんが気さくに声を掛ける。

「ニシンはやっぱりカズノコが入る前の方がうまい」といった通の会話が嫌みなく聞こえるのは、食のプロが集うこの店ならではの魅力の一つだろう。

実は石原さんは来年末で引退し、後任に店の運営を引き継ぐという。「体のあちこちにガタがきてますから」。何とも寂しい限りだが、まだまだ石原さんの握りを味わうチャンスはある。

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1500円の「おまかせ」にカニ、イクラ、ウニ……
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