この道以外ダメ 若者に「キャリア決めつけ症候群」早期の専門化に危うさも

環境変化に対応できない恐れも

情報化やグローバル化によって、予測していなかったような技術変化や企業の事業再編が次々に起こる。職場で細分化された仕事の一端を担い、そこで専門を深めていこうとしても、その仕事がいつ時代遅れになったり、事業再編で切り捨てられたりするか分からない。ひとつのキャリアプランに固執していては危ない時代が来ているという。

キャリア教育に詳しい法政大学教授の宮城まり子さん(心理学)は「仕事をやってみたこともないうちから頭で考えたプランにどれほどの意味があるのか。仕事は実際にやってみて、初めて面白いと感じられることが多い」と強調する。そのうえで「入社したら、まず目の前の仕事に向き合い、そこから吸収していくように心がけないと、環境に適応する力が養われない」と警鐘を鳴らす。

若者はどうして頭で考えたプランに縛られるようになったのか。「『やりたい仕事』病」などの著書がある心理学者の榎本博明さんは、「企業の採用面接の影響が大きい」と指摘する。採用面接では「この会社で何をやりたいのか」「10年後にはどんな仕事をしたいか」などとよく聞かれる。この面接を突破するため、若者たちは大学や就職予備校などで綿密なプランを練るようになっている。

まず目の前の仕事に全力を

ある食品メーカーの採用担当者は「面接でキャリアプランについて聞くのは別にプランを見極めたいからではなく、どれだけ主体的に物事を考え、論理的に語れるかをみたいから」と明かす。これに対して榎本さんは「企業は学生への影響をもっと考える必要がある。どんなことにも没頭できる人間を評価するなど、面接を再考してほしい。そうすれば学生は変わる」と話す。

若い人たちは、どんな姿勢で働いていけばよいのか。企業研修を手がけるシェイク(東京都目黒区)の吉田実社長は、「会社に入った後、先が見えなくて気持ちが晴れないことがあっても、とにかく、目の前の仕事に全力を傾けてほしい」と助言する。

吉田さんは若い世代が自分の将来のことで頭がいっぱいで、今、職場で起きている様々な問題に対して傍観者になるのを強く懸念する。「職場でどんな課題が持ち上がっているか、それに対してどんな行動をとるべきか、自分の問題としてとらえる『ジブンゴト化』が大切」と説く。

問題解決のために提案し、自分から率先して周りに働きかけていく。そんな日々を懸命に送っていれば、自分が働く道筋も開けてくる。変化の時代には、そんな柔軟性が求められているようだ。

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧