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職場の知恵

Iターンで地方の公的ポストに職 シニアの新しい生き方

2012/12/3

地方で暮らしたいと考える都市の会社員がひそかに注目する転職ルートがある。地域活性化を担う公的ポストの公募だ。厳しい環境で働いてきて、地元にはないビジネス感覚を持つ人材が求められている。公募でIターンしたシニアの挑戦を追う。

■縁もゆかりもない土地に…

地場産の見慣れぬ野菜の食べ方を地元スタッフに聞く岡さん(右)(熊本県水上村)

熊本県水上村は宮崎との県境に位置する山村だ。岡紀彦さん(55)はここを終(つい)の職場に選んだ。今春、村が出資する第三セクター「みずかみ」の社長になった。東京で生まれ育ち、赴任前は福岡県で働いていた。「縁もゆかりもないが、ここに骨を埋める」と笑う。子どもの学校の都合で今は単身赴任。いずれ家族も呼び寄せる。

「社長募集」。2011年秋、見慣れぬ求人広告に目を留めた。物産館や温泉施設などを運営する第三セクターの社長を村が探していた。第三者の視点で魅力を掘り起こせる人材を全国から募り、約70人の応募者から岡さんが選ばれた。

大学卒業後に大手コンピューター会社に就職。当時の定年は55歳。そこをゴールと決めて働いてきた。43歳で人材会社に転職したときも、思いは変わらなかった。だがいざ55歳が近づくと戸惑った。心身ともに健康で、まだまだ働ける。ならば一度キャリアに区切りは付けるが、全く違う仕事に挑戦しようと考えた。「田舎で暮らしたいとも思っていた。まさに運命的な出合い」と話す。

赴任から半年。かつての人脈を使い、地場野菜を東京に直接卸すルートもつくった。「澄んだ星空を生かして天体観測ができる村として観光客誘致も画策中。地元の人が気づいていない村の魅力がたくさんある」と意気込む。

■ゼロからつくってみたい

島田正樹さん(54)は今年3月に島根県浜田市にやってきた。東京の自宅に妻子を残した単身赴任だ。13年夏に開館予定の市立中央図書館の館長を市が公募。島田さんに決まった。

大学卒業後に図書館に書籍や蔵書管理システムを販売する会社に入社した。営業や物流管理などを長年担当した。業務委託などで公立図書館の運営に会社が直接携わるようになり、島田さんも07年以降、公立図書館で館長などを務めた。

「会社を辞めなくても、定年までどこかで館長を務められたと思う。でも館長がやりたいわけではない。これまでの経験をフル活用し、理想の図書館をゼロからつくってみたかった」。自治体から業務委託された立場では館長とはいえ裁量に限界がある。公募を知り、すぐに応募した。

アイデアはいくつもある。例えば電子書籍の導入。蔵書の場所も取らないし、貸出期限が過ぎればアクセス権がなくなるだけで返却に来る必要もない。「ほかの自治体の手本となる先進的な図書館にしたい」

特定非営利活動法人(NPO法人)ふるさと回帰支援センターは、地方と都市生活者の橋渡しをしている。専務理事の高橋公さんは「多様な仕事の経験者がそろう都市部は地方にとって人材の宝庫。スキルと知識があり、コミュニケーション能力にたけた中高年は地方からみれば貴重な人材だ」と説明する。

ただすべての公募がうまくいっているわけではない。途中で帰ってしまったケースも散見される。Iターン希望者は地方でのんびりした働き方を望みがち。だが受け入れる側は当然成果を求め、厳しく評価する。そんなミスマッチがときに不幸な結果を招く。

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