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職場の知恵

シブヤ大学に三宅島大学 市民の「大学」が地域を変える

2012/11/21

職場の知恵

街全体がキャンパスで、そこに暮らす住民らが先生。学ぶのは街の魅力や生き方、働き方。そんな市民による市民のための「大学」が全国に続々誕生している。その背景には学ぶことを通して自分の人生や地域を変えていきたいという思いがあるようだ。

都会の夜を歩く

街の散歩で印象に残ったものをグループごとに発表(東京都渋谷区で開いたシブヤ大学の授業)

11月3日、夕暮れ迫る東京都渋谷区の一角に20~30代を中心とした男女約20人が集まった。初対面同士で4人一組となり、近辺で開いていたアートフェアの会場を歩く。題して「夜のおさんぽ。in青参道」。

高級ブランド店に設置された巨大オブジェ、美容室に飾られた合成写真――。各チームが約50カ所の展示会場のうち好きなところを店員や作家の説明も受けながら見て回る。最後はカフェに集まり、チームごとに写真を使って印象に残った場面を紹介した。

参加した都内の女性会社員(27)は「よく知らなかった街のことが少しわかった。普段なら入らないような店にも入れて面白かった」と満足げ。終了後は希望者による食事会も用意され、新しい人脈づくりにも役立つ仕組みだ。

これは特定非営利活動法人(NPO法人)シブヤ大学が開く授業の一つ。ここは法律で定められた正規の大学ではない。校舎を持たず、渋谷の店舗や公共施設、公園などを教室と見立てて2006年に始まった生涯学習の場だ。

登録すれば原則無料

学生登録すれば、だれでも参加可能で実費を除き原則無料。毎月第3土曜日を中心に約10講座を開く。テーマは生き方、働き方、街づくり、趣味に関するものなど様々。先生はその道の専門家や渋谷で働いている人たち。「夜のおさんぽ」授業も企画したのは区内で働く女性会社員だ。現在1万6千人ほどが登録しており、各授業は平均して定員の2~3倍の申し込みがある。

学長の左京泰明さん(33)は「多くの人が将来への不安や様々なストレスを抱える中、それを解消するためには学んで考え、自分の人生や地域社会を変えていく必要があると思い始めている」と語る。

大学運営費の6割は企業の協賛金で賄う。ホームセンターで防災グッズの活用講座を開けば販売促進につながるので店は協賛金を出す。地ビールづくり講座ならマーケティングにもなるとビールメーカーが協力する。残る4割は区からの事業委託費や寄付だ。

これを見た全国各地から「自分の街にも『大学』をつくりたい」との声が起こる。そこでシブヤ大学がノウハウの提供を始めたところ、都市部を中心に京都カラスマ大学、福岡テンジン大学などが誕生。姉妹校は8校に増えた。姉妹校以外にも都市型「大学」が各地に生まれている。

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