2012/11/14

職場の知恵

働き続けてほしいからこそ

21世紀職業財団(東京都文京区)は今秋「産休・育休者セミナー」を始めた。出産を経て職場復帰を控える社員が各社から集まる。復職後の働き方に関する講義では「子育て支援策は必要な期間に限って使う」「家族の支援など別のサポート体制も検討する」などと助言する。

育児期と重なる30代前半は仕事で前線に立って活躍する時期だ。ここでの仕事の経験は将来のキャリアを左右する。事業開発部の菅原千枝部長は「厳しいと思うかもしれないが、10年、20年先を考えれば、制度に頼りすぎないのが本人のためだ」と強調する。

女性が職場に進出して以来、子育てと仕事の両立は長年の懸案だ。不況になると締め付ける傾向は以前もあった。ただ日本は生産年齢人口が減っており、以前と状況は違う。子育て社員に厳しく臨む企業も、労働市場からの女性の退場を望んではいない。

三井住友銀行の国部毅頭取は「結婚退社が当たり前だった時代と違い、女性も長期的な戦力になってもらわないと困る。子育て支援策を整え、男性上司の意識改革など組織風土の変革も進めている。両立は大変だと思うが、甘えを払拭し、プロ意識を持って働き続けてほしい」と強調する。

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子育て社員の活用を模索する動きがある一方で、出産・育児を理由とした労使トラブルも相変わらず絶えない。育児・介護休業法に関連して全国の労働局雇用均等室に働く側が寄せた相談は2011年度で1万415件。前年比222件の増加だ。「妊娠を報告したら退職を迫られた」「育休から復帰したら職種転換を強要された」など深刻なケースも含まれる。

なぜ日本では仕事と子育ての両立がなかなか実現しないのか。コンサルタントのパクさんは国際比較し、米国やアジアと異なる社会的な要因を指摘する。「米国では男性が家事を分担する文化があり、女性の子育て負担を軽減している。アジアでは外国からの安い労働力をメイドとして雇える。日本はいずれもなく、女性が負担を強いられる」

育児休業を取得し、休業給付金を受け取る男性は徐々に増えているとはいえ、まだ全体の2%に満たない。ブームだといわれる割にイクメンの活躍はまだ限定的だ。「労働市場の開放に消極的で海外からの安いメイドが期待できない以上、日本では父親の家庭進出や家事代行サービスの活用が不可欠だ」とパクさんは主張する。

(編集委員 石塚由紀夫)