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インドネシア映画の充実 スハルト退陣後に若い才能続出

東京国際映画祭リポート(4)

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NIKKEI STYLE

アジアの秀作を集めた「アジアの風」部門は、コンペティション部門と並ぶ東京国際映画祭のもう一つの顔だ。石坂健治プログラミングディレクターはアジア全域から幅広い作品を選んでおり、アジア全体の動向を大づかみに見渡すことができる。2000年以降、進境著しいのは東南アジア。今年はその大国であるインドネシアに注目し、3人の監督の特集を組んだ。

インドネシア映画はここ5年ほど年間製作本数が100本に迫る活況だという。そのきっかけとなったのは1998年のスハルト政権の崩壊。それまでメディアを牛耳っていた独裁者の退陣で「映画界の風通しがよくなり、製作本数が急速に増えた」(石坂氏)。

1961年生まれのガリン・ヌグロホ、70年生まれのリリ・リザ、78年生まれのエドウィン。特集された3人の監督は世代も作風も違うが、現代インドネシア映画を引っ張り、国際的にも注目されている映画作家だ。

ガリン・ヌグロホの新作「スギヤ」は、激動のインドネシア現代史をリアルに、そして格調高く描く力作だった。カトリックの指導者、アルベルトゥス・スギヤプラナタ司教(通称、スギヤ)を軸に、1940年から49年まで、すなわちオランダの植民地時代から日本の軍政時代を経て、対オランダ独立戦争までを描く。

この年代記の中心に立つスギヤは、多様な文化、多様な宗教を抱えるインドネシアの独立のためには、互いの価値を認め合う寛容の精神が必要だと説く。そんな理念を示すスギヤの周囲に、過酷な現実を生きるさまざまな立場の人物が配され、群像劇のようにドラマは展開する。オランダ人や日本人も登場するが、その残酷さと同時に、人間味も描き出す。また、インドネシア人の不寛容も直視する。一面的に描かれた人物がほとんどいないのだ。それがこの映画の強さとなっている。

同じくヌグロホの「目隠し」(2011年)はイスラム原理主義集団による家族の拉致という現代の社会問題に挑んでいる。こちらも「不寛容」が主題。抑制の効いた描写が力強い。

「虹の兵士たち」(2008年)でインドネシアの興行収入記録を塗り替えたリリ・リザは旧作2本のほか、コンペ部門にも新作「ティモール島アタンブア39℃」を出品した。同作は東ティモールとの国境の町、アタンブアを舞台に分断された家族の痛みを描く。冒頭シーンの船に掲げられた破れたインドネシア国旗から終幕の慟哭(どうこく)に至るまで、鮮烈なイメージに満ち、受難の苦しみがひしひしと伝わってくる。

最も若いエドウィンは欧州の映画祭で高く評価されている才能。新作「動物園からのポストカード」は、幼いころから動物園に住みつき、キリンやゾウの飼育係をしている若い女が、不思議な手品師と出会い、外の世界を知り始めるという物語。動物園というモダンな施設で起こる、魔術的な出来事を通して、近代と前近代、現実と超現実を衝突させる。シュールな感覚はタイのアピチャッポン・ウィーラセタクンを思わせる。都市化が進むインドネシアの現実がその背景となっている。

民主化と情報化が後押し

24日のシンポジウムでは3人の監督がそろって登壇した。

インドネシア映画の転換点についてリリ・ラザは「90年代半ばから民主化の波が広がり、外からの情報、特にアジアからの情報がインターネットやDVDを通して入ってきたのが大きい」と指摘。政府に統制されていた映画界の規制も薄れ、多様な映画が作られるようになったという。

暗黒時代といわれる90年代に孤軍奮闘していたヌグロホは「スハルト政権と軍部が映画を含む出版業界を掌握し、若い監督が出ていくことが難しかった」と当時を振り返った。海外での評価のきっかけとなった「一切れのパンの愛」の91年東京国際映画祭での上映も、インドネシア政府の協力が得られず、国内では抗議を受けたという。「闘わないと、映画はできない」と実感を込めて振り返った。

当時まだ中学生で、そんな映画界の状況さえ知らなかったというエドウィンも90年代後半から「若い人が大衆文化に親しむようになり、その感覚が新しい作品を生み出している」と語る。自身も「日本の文化には親しみがあるし、漫画は20年くらい前のものをよく読んでいる」という。

今後についてヌグロホは「どの時代にも闘わなくてはいけないものがある。それはかつて軍部であったが、今はイスラムの過激派の問題や、市場主義・消費主義の問題だ。インドネシアが抱えている問題に対峙(たいじ)する。止まるわけにはいかない」と語った。

リリ・リザは「ここ10年のインドネシア映画は資金に恵まれ、観客も増えた。ただ、成功したからといってもう一度同じことはしたくない。インドネシアの文化や宗教は多様であり、私もいろいろな方法を試してみたい。大きな資金をかけるものから、低予算のものまで、さまざまなものに挑戦するのが私のスタイルだ」と話した。

社会が大きく動く時、映画もまた大きく動く。3人の作家に共通するのはそんな社会の底流を透視するような鋭いまなざしにあるのだろう。

(編集委員 古賀重樹)

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