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中国映画の出品貫く 問われる文化交流のモラル

東京国際映画祭リポート(2)

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NIKKEI STYLE

映画祭はいきなり揺れた。開幕を2日後に控えた18日夕、映画祭事務局に1通のメールが届いた。コンペティション部門に選ばれたワン・ジン監督の中国映画「風水」の不参加を伝える内容だった。

すでにラインアップを発表し、チケットも販売、上映用の素材も到着し、字幕も付け終わっていた。そんな土壇場でのキャンセルは異例のこと。都島信成事務局長によると、最初のメールには差出人の名前もなかった。

同日夜、中国国営の新華社通信が「風水」の製作チームが参加取りやめを表明したと報じた。報道によると、製作チームは「日本政府と右翼は争いの解決に向け誠実な態度を示さず、中国国民の感情をひどく傷つけた」との声明をだした。尖閣諸島問題への日本政府の対応への抗議であることは明らかだった。日本の一部メディアもこれを引用する形で「出品中止」と報じた。

映画祭事務局は19日夕「出品者側から正式な連絡を受けていない。上映の予定に変更はない」と発表した。その後、メールの送信者が同意書を結んだ製作会社の別の人物とわかったが、9月上旬に結んだ同意書に「主催者の同意なしには出品をキャンセルできない」との規定があることから、出品取り下げには同意せず、予定通り22日に上映することを決めた。

上映にあわせて来日する予定だった監督、主演女優、主演男優の来日は取りやめになった。来日した撮影監督も22日夕の記者会見と夜の上映後の質疑応答への出席を見送った。夜8時55分、TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映は予定通りスタートした。上映前に映画祭事務局の矢田部吉彦プログラミングディレクターは「風水」の芸術顧問を務めた映画監督のシエ・フェイ(謝飛)氏のコメントを読み上げた。

「映画祭の事務局が、我々の映画『風水』を評価していただいたことに感謝の意を表します。そして、本日ご来場のすべての皆様に、御礼申し上げます。皆様にこの映画を楽しんでいただけることを心から祈っております」

同日夕の記者会見で都島事務局長は、これまでの経緯を説明し、「出品」の状態は続いており、「授賞の対象にもなる」との判断を示した。

記者会見では映画祭側の対応について「中国側の怒りを増幅させる懸念はないのか」という質問もでた。これに対し都島事務局長は「映画祭は文化交流の場。われわれが選んだよい映画がたまたま中国の映画だったということで、そういう映画を上映できないということになると、政治を介入させたことになる。『風水』のような素晴らしい映画を東京から発信していくことこそ、ぼくらがやるべきことだと判断した」と答えた。

「東京国際映画祭がとった態度は立派だったと思う」と評するのは奥原浩志監督。全編を北京で撮った中国語映画「黒い四角」をコンペに出品している同監督は24日の記者会見で「映画を作り、観客に見せたくない映画製作者や監督なんていない。ただ彼らは彼らで国内の事情やそれぞれの立場があり、それを批判しても仕方がない。それに対し文句を言うでもなく、受け止めて、かつ上映する。それで映画祭の威厳も保たれる」と語った。

圧力を受け続けた歴史

東京国際映画祭はこれまでも様々な政治問題、社会問題を巡り、上映やイベントへの圧力を受けてきた。近年では1997年にダライ・ラマと登山家の交流を描いた米国映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」の上映に反発した中国が自国の2作品の出品を取りやめた。2010年には台湾の呼称問題を巡り、中国代表団が開会式をボイコット。台湾代表団も開会式参加を見送った。2009年には和歌山県太地町のイルカ漁を撮った米国映画「ザ・コーヴ」について、同町などから上映中止要請を受けながら、上映に踏み切った。

五輪をはじめとした大規模な国際イベントが、時として国家間の政争の具となることは歴史が物語っている。内外の耳目を集める有力な国際映画祭も例外ではない。しかし、文化の世界は政治の世界と一線を画すべきであることは間違いない。そうしなければ基本的人権である言論・表現の自由が脅かされかねないからだ。

文化交流の担い手たちは、ほぼ例外なく国家より弱い立場にある。ことによっては時の為政者の思惑に利用されかねない。だからこそ最低限守るべきモラルがある。それは突き詰めれば表現の自由を守るという一点に尽きる。カンヌ国際映画祭やベルリン国際映画祭が、表現の自由を脅かされている映画人を擁護し、積極的に作品を上映するのもそのためだ。

1980~90年代前半の初期の東京国際映画祭は台湾の作品や中国政府の公認を受けていない作品をめぐり、中国代表団の意向に翻弄(ほんろう)されながら、なんとか選んだ作品を上映し、映画祭の主体性を守ろうとしてきた。90年代後半以降は、グローバル化とデジタル化の進展に伴い、旧共産圏や第三世界においてさえ国家による映画の統制は難しくなり、そういう時代は去ったかとも思われた。

それでも国と国、国と地域の関係に緊張のない時代はない。ましてや中国と台湾、チベットの問題と違って、今回は日本が一方の当事者となっている。文化交流が「魂が行き来する道筋」(村上春樹氏)だとしたら、その担い手のモラルはますます強く求められる。魂の道筋をふさいではならない。(編集委員 古賀重樹)

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