インド版「巨人の星」の裏に意外な人脈図編集委員 小林明

日印の高度成長を比べると…

実際にインドの経済発展はどの段階なのだろうか?

日本とインドの高度成長を比較するうえで興味深い資料がある。

図7

図7は日本での主な耐久消費財の世帯普及率の推移。1950年代以降、「三種の神器」といわれた洗濯機、冷蔵庫、テレビが普及し始め、時代を追いながら、乗用車、エアコン、電子レンジ、VTR、パソコン、デジカメ、薄型テレビなど次々に新たな耐久消費財が家庭に浸透していったプロセスが読み取れる。

インドでの普及率をこのグラフに当てはめてみると面白い。

例えば、2010年の冷蔵庫だと22%。つまり、日本の1960年代初めのころの段階ということになる。これがカラーテレビなら31%。つまり、日本の1970年前後という段階になる。

池田勇人首相が国民所得倍増計画を掲げたのが1960年。以来、日本人は懸命に働き、豊かな生活を手に入れた。1964年に開催された東京五輪に向け、新幹線や高速道路、下水道などのインフラ整備も急ピッチで進んだ。一生懸命に働けば、努力が報われて豊かになれる。そんなチャンスがあふれていた時代。現在のインドもまさにそんな空気に包まれているわけだ。

「養成ギプス」「ちゃぶ台返し」で“文明の衝突”

写真8 トムス・エンタテインメント提供

とはいえ、アニメを日印で共同制作する過程では数々の“文明の衝突”もあった。

例えば、星飛雄馬が体に着けていた「大リーグボール養成ギプス」写真8)。

インドのスタッフからは「子どもへの虐待と受け取られかねない」と注文が付いた。そこで、話し合いの結果、強力なバネではなく、自転車のゴムチューブを使ったややマイルドな印象の「養成ギプス」に切り替えることにした。「原作のインパクトをできるだけ損なわないように苦心した」と古賀さんは振り返る。

写真9 トムス・エンタテインメント提供

さらに議論になったのが、父、一徹が激怒した際の「ちゃぶ台返し」写真9)。

「食べ物を粗末にすることは好ましくないし、現実にありえない」とインド側に拒否反応が起きた。「日本人もちゃぶ台返しはめったにしない。あくまでもシンボル的な演出だから」と古賀さんは説明。現在、双方の妥協点を巡って調整作業を進めているという。

このほか、登場人物の目鼻立ちや服装、飲酒の場面などについてもインドで受け入れられやすいように修正しているようだ。

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