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家族に代わり寺院が弔い 永代供養墓という選択

2012/10/10

家族の代わりに寺院が責任を持って供養する永代供養墓を自分たちの墓として考える人が目立ってきた。独身者や子どものいない夫婦が増え「墓の継承者がいない」ことを理由に挙げる人が多いが、「夫の実家の墓に入りたくない」「子どもに苦労させたくない」といった家族観や死生観の変化も背景にある。永代供養墓という選択の実情を探った。

■夫婦で事前に話し合い

埼玉県に住むA子さん(67)は8月に夫を亡くした。墓については5~6年前に「永代供養墓にしよう」と2人で決めていた。夫は再婚。先妻は離婚後、若くして亡くなり、息子は先妻の親族に引き取られた。A子さん夫婦には子どもがおらず、墓を設けても継承者がいないので、永代供養墓という選択は必然だった。

法要の後、永代供養墓にお参りをする遺族。遺骨は骨つぼで安置されている(東京・広尾の東江寺)

A子さんは「いろいろな人と一緒の方がにぎやかでいい」と、骨つぼから出して他の遺骨と一緒に土に返す合葬形態を望んだ。実際に墓選びを始めたのは、夫が病に倒れてからだ。亡くなる10日ほど前に「お父さん、ここに決めよう」と報告すると、夫はにっこり笑ってうなずいた。「すべて納得して旅立ってくれた。私もいずれ夫のもとに行く」とA子さんは静かに語る。

A子さんのようにあらかじめ墓の形態を決めているケースはそう多くない。

■「戒名は要らないが墓は欲しい」

2年前に妻を亡くしたB男さん(77)は、キリスト教徒だった妻側の家族と葬儀のことでもめ、結局葬儀は行わず、お骨も北九州市の自宅に置いたままだったが、昨年の東日本大震災を機に、東京に住む独身の娘2人と同居。戒名は要らないが墓は欲しいと、永代供養墓をネットで探した。行き着いたのが東江寺(東京都渋谷区)。「駅から近いのに静か。墓地の中央に永代供養墓があり、日当たりも良い。住職も快活で感じが良かった」とB男さんは言う。

墓石に「○○家の墓」と刻まれる「家墓(いえはか)」は、明治後期から増え、昭和初期に主流になった。「戦前は一族の遺骨を共同で納め、戦後は核家族化により、その家墓は長男夫婦が入ることが多くなった」と隔月刊誌「SOGI」の碑文谷創編集長は説明する。永代供養墓が広がったのは1990年ごろからだ。

■核家族・少子高齢化が普及を後押し

永代供養墓は家族に代わって寺院が供養する。継承者が要らないので、核家族化や少子高齢化が進むにつれて人気を集めた。特定非営利活動法人(NPO法人)永代供養推進協会(東京都目黒区)の小原崇裕代表理事は、年間1500件の仏事相談を受けるが、うち500件が永代供養墓についての相談だという。

永代供養墓を選択するのは跡継ぎのいない人たちばかりではない。「たとえ息子さんがいても夫婦で永代供養墓を生前契約するケースが、最近は顕著になった」(小原さん)。お金も手間もかかる墓の世話で子どもに負担をかけたくないという親心だ。

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