騒音歌舞伎「ボクの四谷怪談」ロックで歌い上げる青春群像

鶴屋南北の歌舞伎は型破りな話が多いが、橋本治脚本・作詞、蜷川幸雄演出の「ボクの四谷怪談」も破格な舞台である。江戸時代と現代がないまぜになっており、ストーリー展開も原作の南北通りではない。「大きな物語」が消えてしまった今、阿波踊りの「踊る阿呆(あほう)に見る阿呆」的な「騒音歌舞伎(ロックミュージカル)」が虚無的な祝祭感をかき立てる。

最初に、絃(いと)の調べは七五調 鼓(ドラム)の響きは八拍子(エイトビート)との説明が出てくるが、なぜロックなのか。ロックが1970年代の若者にとって反逆の象徴だったということもあるだろうが、結局、思いついた陳腐な答えは、四谷怪談には「お岩」さんがつきものだから。「岩」は英語で言えば「ROCK」。それが音楽のロックになったのであろう。

それにしても、こんな「四谷怪談」は見たことがない。作家の橋本治が東大在学中に書いたというのだが、蜷川が70年代に読んだことがあり、その記憶の底から蘇(よみが)らせたのが今回の作品だ。

時代は、70年安保後と、南北の「東海道四谷怪談」が初演されたころと、浅野内匠頭が吉良上野介に斬りつけた「松の廊下」事件のころとがシンクロナイズされ、ごちゃまぜになった不思議な空間。

序曲は「ロックが俺を狂わせる」で、ホテル街のネオンが輝くいかがわしそうな悪場所に登場人物たちが踊ったりしながら姿を現す。俳優の顔見世だろうか。

続いて浅草観世音境内の場。髪をブロンドに染めて、Tシャツ・ジーパン姿で職もない民谷伊右衛門(佐藤隆太)が道端に座って傘を売っている。ラジオのキャラクターとして人気が高い文化人タレント、伊藤喜兵衛(勝村政信)と早熟な娘、お梅(谷村美月)がやってくる。伊右衛門に一目ぼれしたお梅は結婚を申し込むが、伊右衛門はお岩(尾上松也)という病身の妻がいると話す。伊藤父娘はおかまいなしに伊右衛門を口説き、お岩がなくなったら後添えにと一方的に決めてしまう。

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