手話の「関西弁」はどんな特徴? 大阪は身ぶり大きく

例えば「白」は、はけで頬におしろいを塗るしぐさ。伝統産業で働くなかで生まれた手話も多く、「黒」は墨をする動きだ。高齢者が多く使う手話には、中指で手のひらをこすって「色」を表現する手話もある。染料を溶く動作がもとだという。

最近まで手話を授業で教えず

日本のろう学校では最近まで、唇の動きを読んだり発声したりしてコミュニケーションを図る教育を重視し、手話を正式な授業では教えてこなかった。このことも、地域ごとに方言が使われている背景にあるという。

一方、ろう学校で生まれた手話もあると聞き、大阪市立聴覚特別支援学校(大阪市中央区)を訪れた。教諭の前田浩さん(59)が、右手を右頬の横で後ろ向きに振る手話を見せてくれた。「できない」という意味で、野球のファウルを表す審判のサインがもとらしい。「本校は寄宿舎が学生の生活の場。独自の手話が生まれ、引き継がれたようです」

手話も時と共に変化

それほど様々な手話があると、他の地方に行った時に苦労するのでは。「『標準手話』があります」と矢野さんが教えてくれた。日本手話研究所(京都市右京区)などが協議し、共通の手話を決めているという。主に手話通訳士や後天的に聴力を失ったろう者が学び、テレビ番組や講演会などの手話通訳で広く目にする機会も増えてきた。

ただ「地域の手話は地域の文化。大切にしたい」と前田さんは話す。「見れば大まかな意味が伝わるのが手話の特徴。地域ごとに違っても、さほど不便ではないんですよ」(矢野さん)

話し言葉と同様に、手話も時とともに変わる。全国に広まるものもあれば、廃れる手話もあるという。京都では年に1~2回、ろう者が数百人集まり、手話について話し合いを重ね「京の手話」という冊子をまとめてきた。高齢のろう者を訪ね、古い手話も収集しているという。

取材を通していくつか関西の手話を覚えたが、まだほんの入り口。たくさん覚えるほど、景色の色鮮やかさが増すような気がする。新たな楽しみを、またひとつ見つけた。

(大阪社会部 佐野敦子)

[日本経済新聞大阪夕刊いまドキ関西2012年9月19日付]