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渋谷は日本のブロードウェーになれるかミュージカル劇場「オーブ」の挑戦

2012/8/15

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東京・渋谷のオフィス&商業ビル「ヒカリエ」の11~16階部分に7月18日、東急文化村が開いた「シアターORB(オーブ)」のこけら落とし公演。本場ブロードウェー版のキャストとしては48年ぶりの日本公演となった「ウエスト・サイド・ストーリー」は8月5日まで24回上演され、連日満席の観客を集めた。「渋谷を日本のブロードウェーにしよう」という大胆な試みは、さい先の良いスタートを切った。

シアター・オーブの開場演目となったブロードウェー版「ウエスト・サイド・ストーリー」(撮影・下坂敦俊)

1950年代ニューヨーク。プエルトリコ移民のシャークスと地元のジェッツ、2つの不良グループが対立する中、シャークスのリーダーの妹マリアとジェッツのトニーは恋におちるが、悲劇の結末に至る――。「ロミオとジュリエット」に想を得た1957年初演のブロードウェー・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」はレナード・バーンスタイン作曲の音楽、ジェローム・ロビンズの振付の素晴らしさとともに、今も不滅の輝きを放つ。

脚本のアーサー・ローレンツはリバイバル版に際し結末を劇的に盛り上げる演出を排す一方、プエルトリコ人の会話を英語からスペイン語に変えた。舞台左右に流れた日本語の対訳が、鑑賞の大きな助けになっていた。

ミュージカル専用劇場として設計

ヒカリエの前身は屋上にプラネタリウム、館内に映画館を構えた東急文化会館。2012年度中には東急東横線の渋谷駅が真下に引っ越し、東京メトロ副都心線との直通運転を開始する。渋谷の玄関口を担う高層ビルとして再開発するに当たり、東急グループは文化施設のDNAを引き継ぐことも早くに決めた。そして「演劇、音楽、ファッション、デザイン、アートが集積する街」にふさわしい劇場の主力コンテンツに、ミュージカルを据えた。

東京・渋谷「シアターORB(オーブ)」の内部。どの席からも舞台がよく見える(撮影・下坂敦俊)

運営部門の文化村はすでに、駅をはさみ反対側の東急百貨店本店裏に最大座席数2150席のオーチャードホール、同747席のシアターコクーンを構え、同1972席のオーブは3つめの大舞台となる。コクーンとの違いは規模の大小で明らかだが、座席数に大差のないオーチャードとは「箱」の構造が異なる。クラシックのオーケストラ演奏会、オペラなど生(なま)音を前提に音響設計したオーチャードが、奥行きの長い「シューボックス(靴箱)形」を採用したのに対し、マイクを使うミュージカルが主体のオーブは間口を広げる代わり、舞台から客席最後列までの距離を28.8メートルと短くとり、見やすさを優先した。

ハード(施設)面でミュージカル劇場の体裁を整えた上で、ソフト(演目)面は「ウエスト・サイド・ストーリー」と同じく、海外から招いた原語上演・日本語字幕付きの作品を主力にしていくという。9月は1956年12月4日、メンフィスのスタジオに集ったエルビス・プレスリー、カール・パーキンス、ジョニー・キャッシュ、ジェリー・リー・ルイスの4人による1夜限りのライブを再現するブロードウェー・ミュージカル「ミリオン・ダラー・カルテット」、10月はフランス版「ロミオとジュリエット」とウィーン・ミュージカル「エリザベート」……と英語、フランス語、ドイツ語の名作が立て続けに登場する。「エリザベート」を受け、宝塚歌劇団出身の歴代キャストが日替わりで歌う11月の「スペシャル・ガラ・コンサート」が始まってようやく、日本語の歌唱が現れる徹底ぶりだ。

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