帝国劇場「ラ・マンチャの男」永遠の人生応援歌

ミュージカル「ラ・マンチャの男」と言えば松本幸四郎。1969年の日本初演から43年、主役のセルバンテス=ドン・キホーテを演じ続けて、古希を迎える今夏の帝劇公演で上演回数は1200回を超える。ロングランの理由は、役作りにかける幸四郎の精進もあるが、作品自体が人生の永遠の応援歌となっている点も大きい。

16世紀末、スペイン・セビリアの牢獄(ろうごく)に、宗教裁判にかけられるため、詩人のセルバンテスが従僕(駒田一)と共に入ってくる。盗みや殺人の罪で投獄されている囚人たちは、セルバンテスをなぐさみものにしようとして牢名主(ろうなぬし、上條恒彦)は裁判をやろうと言い出す。セルバンテスは即興劇の形で申し開きをしたいと提案し、書きかけの台本を元に囚人たちと芝居を始める。セルバンテスが演じるのが、あまり若くはない田舎の郷士アロンソ・キハーナ。キハーナは本を読みすぎて狂気の兆候を示し、自らが遍歴の騎士、ラ・マンチャの男ドン・キホーテとなって、すべての悪を滅ぼすため世界に飛び出そうとするのだった。

従者のサンチョ(駒田)を引き連れたドン・キホーテは、ただの宿屋を城と錯覚して投宿、そこで出会った下働きの女、アルドンサ(松たか子)を思い姫ドルシネーアだとして敬愛をささげる。一方、出奔したキハーナの屋敷では姪のアントニア(松本紀保)やカラスコ博士(福井貴一)、神父(石鍋多加史)らがキハーナの行方を心配している。

暗い牢獄。オーバーチュア(序曲)の前にギター演奏が始まり、影のような人物がフラメンコのような踊りを踊っている。上方から階段が下ろされ、セルバンテスが宗教裁判所の隊長らに連行されてくる。そこから休憩なしで2時間20分、緊迫した舞台が一気に展開する。

幸四郎は狂言回し的なセルバンテス、劇中劇としての田舎の郷士キハーナと遍歴の騎士ドン・キホーテの3役を演じるわけだが、役の隅々まで知り尽くしており、無駄な動きを極限までそぎ落としている。聞かせどころはかみ砕くように聞かせ、サンチョらを相手にくだけるところは軽妙なテンポで運んでいく。身のこなしも年を感じさせない。

牢名主と宿屋の主人を務める上條は、1977年から演じている最古参メンバー。持ち前の歌唱力、渋いセリフ回しで、ドン・キホーテに騎士を叙位する場面など要所をキリリと締める。