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宝塚歌劇団花組公演「サン=テグジュペリ」「CONGA!!」 生き方を考えさせる深みある言葉

2012/8/10

「星の王子さま」「夜間飛行」などの小説で知られるフランスの作家で、飛行機乗りでもあったアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900~44年)。中米マヤ族の血をひく妻コンスエロ・スンシンとの恋愛を軸に、その生涯を描いたのが、宝塚歌劇団花組公演の第1部「サン=テグジュペリ―『星の王子さま』になった操縦士(パイロット)―」(谷正純作・演出)だ。「本当に大切なものは目に見えないんだよ」をはじめ、サン=テグジュペリならではの哲学的な言葉を織り交ぜ、人が生きるとはどういうことかを考えさせる舞台となっている。

「サン=テグジュペリ」でサン=テグジュペリを演じる蘭寿とむ(左)とコンスエロ役の蘭乃はな

プロローグは「星の王子さま」の世界。小惑星B―612に王子さま、バラの花、きつねなどが相次ぎ登場する。続く場面は1945年のフランス・リヨン郊外。サン=テグジュペリ(サン=テックス)の友人で、ユダヤ人ジャーナリストのレオン・ヴェルトがブーケを作っている。「星の王子さま」を片手に訪ねてきたドイツ人、ホルスト・リッパートの求めに応じて、ヴェルトは在りし日のサン=テックスについて語り始める。

名門貴族の家に生まれたサン=テックスは、郵便飛行士として南米の空を飛び回り、その合間に小説を執筆していた。1930年、仕事を終えたパイロットたちが酒場に集っていると、喪服姿のコンスエロが姿を現す。エキゾチックな彼女に一目ぼれしたサン=テックスはすぐに結婚を申し込む。夫を亡くしたばかりのコンスエロは1度は拒絶するが、一直線に自分を愛するサン=テックスに次第に引かれていき、結婚を承諾する。

結婚指輪の代わりにサン=テックスがコンスエロに贈ったのが、書き上げたばかりの「夜間飛行」。しかし、この小説が大ヒットしたことが、2人の間にすきま風をもたらす。サン・テックスが忙しくなった結果、夫婦が一緒にいる時間が減ってしまったからだ。そんなとき、サン=テックスの操縦する飛行機がリビア砂漠に不時着、そこで不思議な少年に出会う……。

サン=テックスは花組トップの蘭寿とむ(らんじゅ・とむ)。飛行機の安全が今ほど確立していなかった時代においても、空を飛ぶことにひたむきな思いを持っていた主人公の強さが伝わってくる。それは「子どもの心を持ち続けることの大切さ」を説いた、この作家の世界を体現するものだろう。しかし、コンスエロに対する感情は複雑だ。出会いからすれ違いの段階を経て、再び心が通じ合うまでを丁寧に演じている。

コンスエロを演じる娘役トップの蘭乃はな(らんの・はな)は、多彩な魅力を発揮している。サン=テックスへの複雑な感情を演技やダンスで巧みに表現するとともに、遭難した夫の無事を祈る場面ではラテン風のダンスを披露。さらにサン=テックスが砂漠をさまよう場面では、少年らしさが漂う「星の王子さま」を演じている。

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