2012/8/10

耳寄りな話題

まるでフレンチ 旬に合った特別メニュー

太麺の上には赤く輝く小ぶりなトマト。周りにはチキンコンソメのジュレが散らされている。つけ汁はネギ・タマネギをソテー、ジャガイモを裏ごしし、ラーメンの豚骨だしでのばした冷製スープ、ビシソワーズだ。中にはカラーピーマンと赤タマネギを漬けた自家製のピクルス、緑色の小ネギが色鮮やかに存在感を主張する。

フレンチかイタリアンかと見まがうこの麺料理は札幌駅にほど近いホクレンビルの地下に店を構える「一粒庵(いちりゅうあん)」の季節の野菜添えつけ麺(850円)だ。「その時々の旬に合わせて出す特別メニューは『料理人である証し』と考えているんです」。店長の大島庸司さんはそう話す。

「ラーメン店って、お客さんは『あの味噌ラーメンを味わいたい』と終始変わらぬ安定した味を求めてやってくる。でもフレンチの場合、その日の食材で変幻自在に生み出したメニューを喜ぶんです」。この違いを不思議に思っている大島さんは旬の野菜を中心に、その時々のうまい食材を堪能できる季節メニューに挑戦しているのだ。

同店は北海道産食材にこだわる。今回のつけ麺は余市産のミディートマトに、大丸のデパ地下野菜売り場で出合ったことからメニュー作りが始まった。「食材は品種改良や、新たな品質のものが日進月歩して生まれている。果物のように甘くさわやかなこのトマトをおいしく、つけ麺で食べたかった」。大島さんは自宅では料理をしない。愛妻がある日作ってくれたビシソワーズに「これはつけ汁に使える!」とひらめいた。ジャガイモは北海道生まれの品種、キタアカリを使う。

「一粒庵」の大島庸司店長

トマトは冷やして味を付けてあり一品でもおいしい。太麺と一緒に口に入れるとジューシーさが絡まってイタリアンパスタの味わいになる。さらに、とろみのあるビシソワーズをくぐらせると、うまみが合わさり、もちもちした麺の味が後から際立って感じられる。また、チキンコンソメをゼラチンで固めたジュレが味を変化させるからおもしろい。

「冷製トマトなら細麺のカッペリーニと一緒に食べるのが知られていますよね。でもトロトロのビシソワーズがつけ汁なら、太麺がいいと思うんです」。麺は日本製粉の北海道限定小麦粉、五稜星を使っている。つるっ、もちっ、とろりと食感を楽しむうちに200グラムの麺はすぐに消えていった。

「なぜこんなに工夫を詰め込んだつけ麺を作るのかな」という疑問は、大島さんの経歴を聞いてちょっと解けた気がした。実家は東京でドイツ料理店を営んでいたが、本人は食品冷凍の技師だった。北見市の地ビール、オホーツクビール造りに関わり、縁ができた北海道の食材で自分の味を生み出すためにラーメン店を始めた。理詰めの探求心がメニュー作りにも反映しているのだろう。つけ麺は各日午後5時からの限定発売なので、心して店を訪ねよう。

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