どこまで行くのか札幌ラーメン つけ麺の異才の冒険出張グルメの達人・札幌編(5)

札幌で5~6年前から人気を集めているのが、個性豊かなつけ麺だ。たっぷり盛った太めの麺。濃いめの味付けをした魚介豚骨系のつけ汁を筆頭に、風味豊かなバリエーションが広がっている。独自のワザを注ぎ込む、つけ麺の異才たちを探した。

ダシに魚の「アラ」と「豚」骨

札幌市卸売市場の場外市場に、噂のつけ麺店、「あら焚(だ)き豚骨あらとん」がある。もっぱらの評判は「一度食べたら病み付きになる味」。来店する客の6割を常連が占める。

1番人気のあらとんつけ麺(700円)を頼む。豚骨しょうゆベースの濃厚なつけ汁に、切り口が四角く角のたった太麺がやってきた。麺は普通盛りで300グラムと、普通のラーメンの約1.5倍のボリュームだ。つけ汁からは香ばしい海の香りがこぼれだす。ダシを取るために魚のアラを使っているからだ。

魚の「アラ」と「豚」骨からとったスープだから、あらとん。マグロやサケのほか、旬の魚の頭や背骨などを使う。季節によってはキンキやタイに代わることもある。市場の近くに店舗を構えるのは、新鮮な魚のアラを入手するためなのだ。魚のアラを使うと生臭さが残ると思いがちだが、全く感じない。なぜなんだろう。

理由を尋ねると、店主の高山秀男さんから答えが返ってきた。まずアラを一度、水洗いしてからオーブンで焼き上げる。すると嫌なにおいを抑えるだけでなく、香ばしさを引き出せるのだという。焼くときにはアラの下にネギを敷き詰め、酒をかける工夫を加える。焼き上げたアラは、豚の頭、背骨、げんこつなどを8~9時間煮込んだ豚骨スープに投入。さらに3時間煮こむ。海のうまみをしっかり引き出したら、一晩寝かせる。

「あらとん」のアラには、様々な工夫が

魚介のだしをラーメンに使う場合、客に提供する前に豚骨スープと合わせるダブルスープが一般的だ。しかし、あえて1つにして煮込むスープにこだわる。高山さんは「この方が深みが出るんだよね」と説明する。1日に提供できるのは150~200杯。こだわりのスープが切れたら営業は終了だ。

高山さんは東京の有名店、麺屋武蔵で8年間修業を積んだ。同店は常に新しい味を提案して客を喜ばせる。高山さんは働きながら「豚骨と魚のアラを一緒にしたら、見たことのない味になるんじゃないか」とアイデアを練った。2006年の開店当時、札幌では魚介系のスープはまだ少なく、勝負できると考えた。熱狂的なファンを増やし、今では北海道大学前に2号店、タイにも店舗がある。